鬼副長のレシピ
私は鷹のように浮遊して、眼下を見下ろしていた。
碁盤の目に区切られた京の町。
殺気に満ちてぴりぴりしているようだ。
大政奉還が成され、慶応四(1868)年一月十一日、新撰組は幕府軍艦富士山丸で江戸に向かった。薩摩、土佐、長州の軍の前に、新撰組含む幕軍は惨憺たる有り様となった。井上さんが亡くなり、新撰組の数もだいぶ減った。伏見の戦において、淀堤の千本橋で三発の銃弾を受けた山崎君は、船上で没した。彼は海軍式水葬の礼で見送られた。
私の大事な新撰組が、踏みにじられてゆく。
泣き叫びたいような気持ちで史実を俯瞰して、私は呻いた。
時代の趨勢だった。
どうしようもならないことだった。
そんな夢を見て、目覚めた私は冷や汗を掻き、滂沱の涙を流していた。全てが済んだことなのに、まるで今、あった出来事のように生々しく感じられて、私は悲しくて苦しくてならなかった。
「今日は土方さんが作ってくれるんですって」
「へ?」
妻がのんびり、沖田君と縁側に並び笑う。
「土方君って料理出来たっけ」
「握り飯と味噌汁くらいは作れる」
「ガスコンロの仕組みとか解るの?」
「おいおい慣れるさ」
果たして土方君の作ったお握りはしらすと梅干の刻んだもの、高菜を刻んだものが入っていて、程よい塩気で大変、美味だった。味噌汁も茸の具沢山で、良い滋味が出ている。
前から思ってはいたけれど、器用な男だ。インスタントラーメンで惨事を起こした沖田君とはえらい違いだ。
私が労いの意味も込めて彼の盃に冷酒を注ぐと、土方君はそれをくいっと飲み干した。





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