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顔じゃない

「違うの?」


 そう尋ねた私の声は、我ながら間が抜けていた。めいっぱい思い込んでいたので、ぶんと大きく空振りした気持ちだ。

 土方君は黙ってワッフルにかぶりついている。気に入ったんだね。


「はい、奥方は……」

「おい、総司。お前の菓子も寄越せ」

「嫌ですよ。土方さん、ご自分のをちゃんと食べたでしょう」


 会話の流れが切れてしまった。

 土方君、わざとだろうか。ワッフルは中にクリームがどっしり入っていて、食べ応えがある。魅惑のおやつだ。夢中になったと言うならそれも頷けるが。


「前が誰だろうと良いじゃねえか。今、大事なら」


 さすが、副長。男前な発言である。妻が誰であっても、私には妻が大事だ。紗々女はどうしているのだろうと、そう考えてしまうのはどうしようもないのだが。

 そしてその妻はと言うと。

 目をきらきらさせて、私のスーツでも上等な物を二着、持ってきた。

 いや、何がしたいか大体解るけどもさあ。


 土方君は洋装もこなすので、着替えは二人だけでしてもらった。土方君、もっと嫌がるかと思ったけど、思いの外、従順だ。因みにスーツは沖田君が紺、土方君がグレーを基調とした物だ。

 そして着替え終わった二人は――――。


 この二人、ホストでもいけるんじゃないかしらん。

 背後に薔薇を背負ってるみたい。特に土方君は総髪なので、違和感がない。


 妻が夢中で写メを撮っている。


 豚肉の生姜焼きを食べてビールを飲む、スーツ姿のイケメン二人。

 私は何だか疎外感である。

 良いもん。

 男は顔じゃないもん。




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