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たい焼き君

 私は書斎に籠り、今日の出来事を書きつけ、相変わらず沖田君研究に励んでいた。

 沖田君は元治二(慶応元・1865)年、三月二十一日付の書状で、さんなんさんの死を佐藤彦五郎に伝えている。これは江戸に下る土方君に託されたようだ。内容は至ってシンプル。


 山南兄、去月二十六日死去仕り候あいだ、ついでをもって一寸(ちょっと)申し上げ候。


 実際の死亡日は二十三日なのだが、端的に過ぎる文章ではある。沖田君とさんなんさんの間柄を考えれば、もう少し何か書かれても良さそうなものだ。或いは、触れたくなかったのかもしれない。沖田君は、さんなんさんの死を詳らかに記す心境でなかったのかもしれない。何だか悄然としてしまう。くぴりと黒糖梅酒を飲む。たい焼きが美味い。二日間、飲まず食わずで寝ていたので、体重は落ちていた。しかしそれは筋肉が落ちたということで、安易に喜ぶ訳にも行かない。良いんだ、ダイエットは明日からするから。前もそう思ったような気がするけど。また黒糖梅酒をくぴり。


 私の中に一つの可能性が芽生えていた。


 妻は紗々女の生まれ変わりかもしれない。

 因果は巡ると言うが、それならば妻が子を、今度こそ無事に産むことも有り得るのではないだろうか。


 紗々女は私の逃げ場所だった。

 紗々女は私の拠り所だった。

 たい焼きが粒餡で嬉しい。


 たい焼き君自身は、毎日鉄板で焼かれて嫌なのかもしれないけど。


 私は自分がさんなんさんであることを認めつつあった。そうと考えれば辻褄の合うことが多いのだ。しかしその自覚は、どこか空恐ろしくもあり、虚空に身を置かれるような心地だった。いやしくも時代の渦中にいた人物である。例え彼が(私が?)、直接、政局に関わらなかったとは言え、新撰組の幹部であったことには違いない。


 たい焼きを頭から食べるか尻尾から食べるか、いつも迷う。


 どちらから食べても同じなのに。味に違いがある筈もなく。

 私もまた、前生がさんなんさんであっても、中身が変わるものではないのだ。




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