半分こ
「ありがとう」
私は目頭を押さえ俯いて、しばらく身動きしなかった。沖田君の労わるような視線を感じる。この若者は、こんな風に、今も昔も人の脆く弱い姿をただ見守るところがあった。それは彼本来の優しさゆえだろう。目頭を押さえる前に見た桜の葉の色が焼きついて、私は何とも言えない狂おしい気分になった。土方君とは衝突もしたし、反りが合わない点も多々あったが、それでも確かな絆が互いにあったのだと信じたい。
「ご亭主。それとこれ、半分こしませんか」
「うん」
チョコレートケーキとレアチーズケーキの半分のトレードを申し込んできた沖田君に、私は素直に頷いた。レアチーズケーキを物欲しそうに見たのがばれたかなあ。
「土方君はまた来るだろうか」
「あの人は気紛れですからねえ。来るかもしれず、来ないかもしれず」
はっきりしないらしい。沖田君はともかく、土方君が我が家に入り浸るイメージは、確かに余りないが。来たらスーツ着せられたり女装させられたり執事服着せられたりするかもしれないし。性格に反して優しげな風貌だから、似合ってしまいそうだ。
私の中で土方君へのわだかまりがゆるゆると解れつつある。彼とはもっと話をするべきだった。私が自死したことで、土方君に何の打撃もなかったとは思えないのだ。
「君の介錯は見事だった」
「……いいえ」
「お蔭で私は苦痛から、早く解放された」
「――――もう、あんな思いはごめんです」
「済まない」
私は近江まで遁走したりなどしていない。
ただ、思うように動かぬ我が身が苦しくて、役立たずの身の上が口惜しくてならず、憤死した。屯所の自室で死ぬに死に切れず喘いでいた私を、偶然にも訪れた沖田君が楽にしてくれた。介錯は腕の立つ者にされるのが幸運である。
その点、私は幸運だったと言えるのだろう。
だが、私は身勝手だった。沖田君の心中も、紗々女の境遇も慮らず死を選んだ。独りよがりだったと責められても無理はない。
「近藤さんはもちろんですが、土方さんも嘆いていました。鬼の副長が、目に見えて憔悴していましたよ。あの人のあんな姿は初めて見たな」
「そうか……」
半分こして正解だった。レアチーズケーキもやっぱり美味しい。
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