ソフトクリーム
何だかよく解らない空模様だなあ。
晴れと曇りの中間のようである。空気が、太陽と雨の気配と、双方を抱えている。
妻は迷ったようだが物干しスタンドを庭に出していた。降ってきたらすぐに取り込んで、と私は指示を受けている。日曜の昼間は勤め人の精神が弛緩すること甚だしい時間帯である。私も例に洩れず、沖田君の隣でごろんと寝そべり、子供のように足をぶらぶら揺らしていた。沖田君は呆れたような微苦笑を湛えている。
良いじゃないか。休日だもの。
スーツという戦闘服を着なくて良い。
「国勢について論じたりとかしたかね」
足をぶらぶらしながら、暇潰しのように私は沖田君に訊いてみる。
沖田君は剣客というイメージこそあれ、憂国の士という印象は薄い。
「伊東さんなんかはよく論じてましたが。私は余り。土方さんがしかつめらしく隊の将来を考えているのをそっちのけで子供たちと遊んだりしてましたし」
「君らしいね」
伊東甲子太郎はどこまでも勤皇派だった。やがて近藤勇らと袂を別ち、殺害されるに至る遠因もそこにある。彼の分派は一種の試金石だった。つまり、誰が近藤勇たち寄りを貫き、残ろうとするか。振るいに掛けられた末、伊東について行った藤堂平助は言わば近藤たちにとっての身内のようなものであり、そこは土方にも誤算だっただろう。死なせたくないと思いながら、手を下さずにはいられない状況だった。
沖田君は藤堂君と仲が良かった。
辛かっただろうな。
あの、動乱の時代。
惜しいと思う命が幾つも幾つも消えた。命の火を踏みにじるように消された。
時代の過渡期の宿命だったとは言え、流れた血の何と多かったことか。
ソフトクリーム美味しいな。
妻が買い物に出る前、私と沖田君にソフトクリームをあてがってくれた。バニラとチョコのダブルである。縁側で寝そべってソフトクリームを食べる。この自堕落が最高である。食の楽しみは小難しい思考や感傷を押し流す力を持つ。
何を考えていたか、途中から忘れてしまったけれど。
忘れるくらいだから大したことじゃないんだろうな。
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