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チョコレートブラウニー

 人は一日の内に変容する。

 その変容を、毎日、繰り返す。同じようでいて異なる日々を生きる。

 

 元治(げんじ)という年号は文久の後。1864年から1865年の間、僅かな期間だ。

 だがその僅かな期間の内に、新撰組内部の人たちは、きっと目まぐるしく生きていたのだろう、とゆとり世代ではないが、それでものほほんとした現代日本人の私は推測する。芹沢鴨の死後、組織としての形態を整え、集団として膨張した。


 くーるくーると私はペンを回す。

 それだけでは飽き足らず、書斎の、自分が座っている椅子を回し始める。回転運動によって、自分の脳みその動きも活性化しないだろうかという、虚しい試みである。


 宝蔵院流槍術を修めた谷三十郎が、幅を利かせ始めたのがこの頃。と、言うのも、当時、近藤勇が谷三十郎の息子を養子とした為である。谷家は家柄も良く、近藤はこれを足掛かりに老中に取り入ろうとした節がある。近藤の増長癖が出るのはこのあたりだろうか。

 そして公の政局・戦局では公武合体派(会津・薩摩藩)と尊攘急進派(長州藩)の全面対決、所謂、禁門の変(蛤御門の変)がある。新撰組には初となる本格的参戦だ。彦根兵が長州藩邸へ放った火から京の町は燃え、その火災は四日間にも及んだと言う。

 この頃、伊東甲子太郎も既に新撰組にいた。

 イケメンだったんだよなあ。


 ルイボスティーを飲み、チョコレートブラウニーを食べながら私は伊東さんを思い描く。沖田君とはまた違った、端整な面持ちの男性だった。腕も確かで、ただ、爽やかな弁舌に、些かの軽みがあり、そこを土方君は軽薄と捉えていたようだ。


 近藤さんが惚れ込んで新撰組に勧誘したのだが、双方の思想に若干の食い違いがあった。

 それがやがて大きな亀裂となるのだが、その頃には私はもう――――。


 チョコレートブラウニーって甘さが程良くて病みつきになるな。


 ええと、それで何を考えていたのだっけ。

 最近、こういうことがよくある。

 気付けば違う私が私の代わりに思考しているような。

 何とも言えない妙な心地である。


 鈴蘭型の電気スタンドの暖色を、見るともなしに眺める。

 この、夕暮れめいた温もりある色は、私をずっと昔に連れて行くように思う。

 島原の行燈に似た色だからだろうか。

 いや、行燈の色はもっと薄暗い。仄かで優しい。


 こうした優しさを、赤ん坊に教えてやりたかった。

 紗々女の子がどうなったのか、私には知る由もない。

 或いは妻と同様であったなら、という怯えもある。

 いずれにしろ私は、自分の子を見ることが叶わなかった。

 紗々女の子も、そして妻の子も。



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