恋愛事情
澄んだ鈴の音色が聴こえる。紗々女の着物の袖口から下がった銀の鈴の音だ。
芸妓のつま弾く三味線などより、私はこの音を聴くのが好きだった。空が白んでくる。長い夜が明ける。日本の夜明けはいつだろうか。それを見る為に、私は、私たちは奔走しているが、思惑は種々様々で、藩により、人により、それぞれ異なるものを視野に置いている。そしてここのところ、尊皇派である私と佐幕派である近藤さんとの思想の差異、西本願寺への屯所移転問題における土方君との衝突があり、それらのことが私を憂鬱にさせていた。身体は相変わらず不調で、思わしくない。
さんなんさんのようなお方に、落籍してもらいとおす。
紗々女の言葉と、それを言った時の澄んだ眼差しが蘇る。所謂、身請けを私に乞うたのだ。
私のものになりたいと、一途に恋い慕ってくれる少女をいじましく思うが、まだ紗々女は幼い。私への恋慕は、淡い初恋のようなもので、遠からず消えゆくものだろう。私は紗々女の黒髪をそっと撫で、もっと立派な方を探しなさいと言った。すると紗々女は真剣な顔で、私の他に、そんな人はいないと言ったのだ。行燈や煙管箱、文机や赤い布団が、次第に朝の光に染め上げられていく。
紗々女を明るく染め上げるのが私であれば、紗々女の願いを聴いてやりたいとも思うのだ。
オールドファッションと牛乳の組み合わせって最高だと思う。
私は資料を見ながら妻からの差し入れに舌鼓を打っていた。良いんだ。ダイエットは明日からだから。前もそんなこと思ったような気がするけど。
沖田君が昔もモテたということを証明するようなエピソードがある。
近藤勇の養女に気が強く、男勝りのコウという娘がいた。女性ながらに佩刀していたそうだ。ところが彼女、沖田君に惚れて、刀を捨て身の周りの世話をするので妻にして欲しいと望んだ。沖田君はこれを固辞し、コウは自害を試みたが果たせず、後、他家に嫁いだという。沖田君が二十三歳の頃のことだ。
いやあ、モテる男は辛いねえ。
微笑ましいような、妬ましいような、そんな思いで私は牛乳を飲んだ。チョコレートドーナツも食べたいなあ。どうしようかなあ。





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