夢
島原は不夜城である。同時に、女たちの苦界でもある。
屯所にいれば詰まる息を、ここに来ることで紛らわせようとしている私は、そうした女たちを軽んじているのかもしれない。苦界を休息の場所とする。
馴染みの芸妓もいるにはいたが、私はここで一人、夜を明かすことを好んだ。店主もそれを承知の上で、紗々女だけを寄越す。
多くの死を、私は見てきた。
或いは敵であり、或いは味方であった者の命が散りゆく様を。
私は総長という肩書のみ重く、余りに無力だ。
近藤さんの変貌も、土方君の冷酷も、止めることが出来ない。
そして、沖田君の病も。
ちょっと食べ過ぎたかな。
私は、グラタン腹になったお腹をさすった。実に美味しかった。マカロニ、海老、鶏肉、マッシュルーム。ホワイトソースはやはり絶品で、私は良い妻を持ったと思う。沖田君も気に入ったらしく、大いに食べていた。赤ワインのボトルは、瞬く間に空になった。
夢を見た。
ふわふわと空を漂っている。
下には夜の町に灯る灯りが星のようだ。
おかしいなと思った。
なぜ、夜なのに、こんなに明るいのだろう。
そう考えて腑に落ちる。
そうか、ここは島原か。眠らない不夜城。懐かしい。
下界ではあのようであったものが、上から見るとこのように見えるのか。
何とまあ、人の命の小さきことよ。
紗々女は息災だろうか。
赤子を、無事に産んでくれただろうか……。





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