沖田君、女装をする
私は事態の把握に努めようとした。頑張った。
目の前には大柄な女性物の衣服。
「お義姉さんからお借りしたのよ」
「何で?」
「だから、沖田さんに着てもらおうと思って」
「どうして?」
「きっと似合うからよ」
「どうして?」
「イケメンは女装する運命にあるのよ」
知らなかった。
今日は休日。芽依子までやって来て、化粧ポーチを開けている。
哀れ、女性たちの好奇心の犠牲となる沖田君一人が目を点にしていた。
身体を締めつけない白いロングワンピース。
「叔父さん、おっきーを着替えさせてよ!」
「これ、頭からだぼっと着せれば良いのか」
「そうそう。んで、背中のファスナー上げて」
すごく気が重いが、女性陣の迫力に抗し切れず、私は沖田君とワンピースと共に寝室に行った。沖田君、まだ目が点だ。可哀そうに。
そうして着替えた沖田君。男性にしては小柄なこともあり、ワンピースは何とかサイズの適用範囲だった。
それから妻と芽依子によるメイクが始まる。可哀そうに。
「きゃあああああ」
「いやあああああ」
別に暴漢が押し入った訳ではない。
女装を終えた沖田君を見た妻と芽依子の歓喜の叫びである。連続して響くデジカメとスマホの撮影音。
そこにはどこか儚げな風情の美女と見紛う沖田君。
睫毛も長いのでマスカラ効果抜群だ。ああ、泣く子も黙る新撰組一番隊隊長が。着せ替え人形と化した沖田君に、私はひたすら心中で詫びた。





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