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久し振り

 気付くと見知らぬ天井が目に入った。物憂い雨音が聴こえる。

 降り出したのだな。こちらを覗き込む、心配げな妻の顔。ああ、そんな顔をさせたくはないのに。


「貴方。大丈夫?」

「ああ。……ここは」

「病院よ。霊山歴史館で突然、倒れたから、救急車を呼んだの」


 妻の後ろに眼鏡を掛けた、温厚そうな白衣の男性がいる。


「特に異常はないようです。お疲れが出たのでしょう。ご自身で、どこか具合の悪いところはありますか?」

「いや、ありません」


 本当にないのだ。

 寧ろ、意識がない間、熟睡していたようで、頭はくっきりとして、いつも以上にクリアーな気分である。私の言葉に、医師であろう彼は、満足そうに頷いて、帰っても大丈夫との旨を告げた。それから看護師に呼ばれ、慌ただしく去って行った。


 私は妻とホテルに戻り、湯に浸かってからホテルのレストランに行った。雨の音はまだ続いている。倒れたことで妻に心配を掛けたが、私は寧ろそれまで以上に元気になって、大いに食べて飲んだ。アボカドと揚げた湯葉、生ハムの入ったサラダなどはとりわけ絶品で、日本酒が進んだ。ワインも飲んだ。何だか妙に気持ちが高揚していた。私ではない私の思い出が胸に去来する。


「貴方、どうしたの?」

「え?」

「泣いてる……」


 妻の言葉に、私はなぜか流れる涙に手を遣る。

 明日には東京に帰る。沖田君に会うのだ。会えるのだ。


 ――――久し振りだ。




いつもお読みくださりありがとうございます。

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