ピンクゴールド
翌日、帰宅すると妻と沖田君がいつものように縁側に並んで座っていた。
私は何かしらほっとするものを感じた。
二人の影がリビングに、斜めに伸びている。
私に気付くと笑顔でお帰りなさいと言った。
昨日、調べたさんなんさんの自害と沖田君の言葉が蘇る。
〝僕が介錯をしました〟
優し過ぎたと語った相手は恐らく、さんなんさんのことだろう。
介錯ってあれだよな。
首を斬る。
慕った相手の首を斬るとはどういう心境か。
さんなんさんは試衛館の食客ではなく正式な門人であり、近藤勇に試合で負けた為、弟子の礼をとり、「近藤勇の四天王」の一人と称されるようになる。そうした人の最期としては、実に悲惨と言える。
「でね、若い頃は似合わなかったピンクゴールドが、最近、しっくりくるようになったのよ」
「なぜですか」
「肌が変化したってことかしらねえ。年を取るって面白いことだわ」
「成程」
「この間、それでピンクゴールドのピンキーリング買っちゃった。きゃっ」
「はあ」
妻よ。
しんみりしそうな私の物思いをぶち壊してくれてありがとう。
夕食の支度に台所へ向かった妻と入れ替わる形で、私は沖田君の隣に座った。妻はコーヒーとチョコブラウニーを出してくれた。妻の焼くチョコブラウニーは絶品である。
私はもごもごと口を動かしながら、にこやかな顔で沖田君を見る。
触れられたくない過去は誰しもある。
私にも妻にも、そして沖田君にも。
さんなんさんのことは軽々しく話題にして良いものではないだろう。
それにしても妻がピンクゴールドのピンキーリングを買ったなんて、私には初耳だった。
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