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ピクニック
妻は割と出し抜けに物を言う。
この日もそうだった。
「ピクニックしましょう!」
沖田君は、聴き慣れない言葉にきょとんとしている。
「三人で?」
「もちろんよ」
確かに今日も良い日和だが。
「沖田君は人には見えないんだぞ?」
「だから、うちの庭でピクニックよ」
果たしてそれはピクニックと言えるのだろうか。寧ろ野点とかじゃなかろうか。妻は私の思惑を余所に台所で張り切っている。私も一応、ビニールシートなどを取り出してきた。沖田君はのほほんとそんな私たちを見ている。
それで良いと思う。
夢でうなされて泣かれるより、ずっと良い。
鶏の唐揚げ、胡麻塩お握り、海老フライ、ブロッコリーのマヨネーズ焼き、苺。
妻が弁当箱に詰めたそれを、庭に敷いたビニールシートの上で、沖田君と妻と三人で頂く。
美味しい。長閑だ。
眺めるのは青空と葉桜くらいしかないが。
妻が笑っている。沖田君も笑っている。
それ以上望むものなどないと思えた。いつの間にか私は、沖田君を家族の一員のように感じるようになっていた。恐らく妻も同様だろう。
もう喪いたくないなと、そう思った。
幽霊相手に、そんなことを考えるのはおかしいのかもしれないけれど。
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