最後のアップルパイ
今日は肉が安かったとかでビフテキと冬瓜のそぼろあんかけだ。ビールにも日本酒にも合うな。迷った。両方、飲むことにした。まず熱々のビフテキはビールで。冷めても美味しいあんかけは日本酒で。そぼろあんかけには妻の工夫で紫蘇の千切りと枝豆が散っている。これがまた、あんかけの風味と絶妙にマッチして、美味しい旬の味覚である。
ビフテキを食べるのに、ナイフとフォークの使い方がいまいち解っていなかった沖田君たちも、要領を覚えるとすぐ、肉汁の虜となったようだ。食べる、食べる。妻が大量に買って、また、腹を膨らますのにそぼろあんかけを作っておいて正解だっただろう。土方君と斎藤君の食べ方が様になっているのは、多少なり、西洋文化触れた経験からだろう。沖田君の切った肉は、何と言うか前衛芸術のようだった。まあ、食べられれば良いんだし。
そんなこんなで翌日、芽依子、再び襲来す。
「ヘッダーの反響が凄かったんだってば!」
まあそうだろうねえ。新撰組の三大スターだもんねえ。
「名前を教えて欲しいって言われて困っちゃったよ」
うん。
「おっきー、はじめちゃん、とっしーって答えといた」
答えたのか。
話を聴いていたおっきーとはじめちゃんととっしーは、複雑な表情をしている。そうだろう。もしさんなんさんがいたなら、さんちゃんとでも呼ばれていたのだろうか。
妻がにこやかに紅茶を淹れて、焼き立てアップルパイと一緒におやつの時間となる。生地から作ってるんだよね、このアップルパイ。そんでレーズンとかも入ってる。正直、妻って良妻だよね。私は外で働いているが、妻は専業主婦として十二分な働きをしてくれている。お給料、払わないといけないのではと思うくらいだ。時たま、買ってくるお洋服やアクセサリーにも目を瞑ろうというものだ。
沖田君たちは西洋菓子(しかも作り立てほやほや)の恩恵に与り、とっても幸せそうだ。その様子を芽依子がまた、撮影する。こらこら。
後に私は悔やむこととなる。
もっと芽依子と沖田君が会う機会を作ってやれば良かった。まあ、かなり勝手に襲来していたけど。芽依子が沖田君に会ったのは、このアップルパイの日が最後になった。
この物語も、残すところあと6話となりました。
沖田君や「私」の行く末を、最後まで見届けていただけたなら幸いです。





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