介添え
翌日は快晴だった。
つまり死ぬ程、暑かった。絶対にこれは日焼けしているな思いつつ、家路に就く。和菓子屋さんで葛餅を土産に買った。きっと沖田君たちに馴染みがあるだろう。帰宅時間なのにまだ明るい。夏至っていつだったっけ。
……さんなんさん
ん?
さんなんさん
あれ? 何か聴こえる。幻聴か?
一歩、踏み出すと私は緑と青と白の空間にいた。
真珠色の膜に包まれて沖田君が眠っている。……本物の沖田君。
呼んだのは君かい?
沖田君の唇が微かに動く。さんなんさん、と。
「…………」
私は鞄と葛餅の入った袋を取り落とした。胸が締め付けられるように痛む。
沖田君が私を呼んでいる。助けを求めているのだろうか。
この真珠色の膜を破れば、彼は目覚めるのだろうか。
しかし、そうすると今いる沖田君はどうなる?
「俺が介添えする」
ぎょっとして後ろを見ると、鷹雪君が立っていた。制服姿だ。目新しいものを見た気分だが、それはそれとして。
「介添えって?」
「あの、沖田総司を、穏便に輪廻に戻す」
「可能なのかい。彼も、沖田君ではあるんだな?」
「――――そもそも、どうして沖田の影が生まれたのか、あんたは解るか」
「いいや」
「土方あたりにでも訊いてみると良い」
踵を返そうとした鷹雪君のシャツの裾を、私ははっしと掴んだ。
「――――何だ」
「戻り方が解らない……」
すごく莫迦にした顔をされた。





バイオレット、バイオレット、シークレット。連載中です。