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荒療治

挿絵(By みてみん)

 私は難解な言語を聴いたかのように、首を傾げて土方君を凝視した。

 土方君の面持ちは変わらない。真剣なままだ。酔いに任せた冗談ではないらしい。


「一体、どうしてそんなことを訊くんだい? 土方君」

「以前、言ったな。あいつははりぼてだと」

「言ったね。本当の彼は別にいるって」


 本当の沖田総司とはこの場合、あの水の中に眠っていた彼を指すのだろう。

 しかしそれが、沖田君を斬ることとどう関わりがある?


「影のあいつを斬れば、本物が目を覚ますかもしれねえ」

「それは……、乱暴だよ」


 正直、私に沖田君が斬れるかどうかの力量はともかくとして、彼に斬りつける自分の姿というものが、私には想像出来ない。


「解ってる。荒療治だが、あいつが本性を抑えておけるのも時間の問題だ」


 間もなくだぞ。

 そう、烏も言っていた。

 私はいつかの沖田君を思い出す。獣のような。あれが沖田君の本性?

 莫迦な。


「私には出来ない」

「さんなんさん」

「私はもう、さんなんさんではないし、もしもさんなんさんであったなら尚更、沖田君を害することは出来ないだろう」


 土方君はどこかで、私の答えを想定していたのかもしれない。それ以上、言い募ることもなく、口を閉ざした。私はふと思う。


「土方君。君こそ転生しないのかい」

「よしや身は 蝦夷の島辺に朽ちぬとも (たま)(あずま)の 君や守らむ」

「……君の辞世の句だね」

「俺はまだ、あの時代に囚われている」


 頑迷だ。そして哀しい。

 鬼の副長と名高かった土方君は、沖田君の幸福を望んでも、自分の幸福はどこか諦めているのだ。彼こそをも救いたいと私は思った。



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