草むしり
どうでも良いけど隊服姿って暑くないのかしらん。幽霊だから気温は関係ないのかな。私は妻の言いつけで沖田君たちと一緒に庭の草むしりをしている。私は麦わら帽子を被っている。小まめに水分を摂るようにと、縁側にはポカリスエットのボトルとコップが置かれている。太陽さん、太陽さん、少し弱々しくなってくださいな。それにしても沖田君や斎藤君はともかく、土方君まで大人しく妻の言うことを聴くとは少し意外である。
「あの人には、どうもな」
頭が上がらないのだと、草むしりしながら土方君が微苦笑する。
「妻は私の知る誰かだったのかい?」
「ああ。ようく知ってたよ」
「ヒント!」
私の子供じみた一声に、土方君がくく、と笑う。
「思い出してやると良いさ。奥さんもそのほうが嬉しいだろ」
「いやー、それが妻には自覚がないみたいなんだよね」
「ああ、あの人らしいな」
ふうん。まあ、良いけどね。
昔が誰であっても妻は妻だ。愛すべき人だ。
蟻が黒い頭を振り振り歩いている。健気だ。
「お二人がいつまでも幸せであるよう、祈っています」
それまで黙っていた沖田君がそんなことを言う。まるでフラグじゃないか。沖田君は、私たちとこの先もずっと一緒なのに。何だか遠い目をして、透明度の高い笑みを湛えている。
沖田君が消えた日常など、今の私には考えるべくもない。
けれどそんな日が来ることの可能性を突き付けられ、私は妙に遣る瀬無くなった。
この物語もそろそろ最終回に向かいます。
最後までお楽しみいただけたなら幸いです。





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