とろけるプリン
明治になり、永倉新八は新撰組における体験記録を『浪士文久報国記事』や『新撰組顛末記』にまとめ、回顧録を綴った。これは非常に貴重な史料であり、新撰組を知る上で大いに手掛かり、足掛かりとなる。対して、同じように「新撰組最強の剣客」と永倉新八と共に謳われた斎藤一は記録を残さず、口伝『藤田家の歴史』や談話があるに過ぎない。
彼の名前の変遷も中々、目まぐるしい。山口一、斎藤一、山口二郎、一瀬伝八、藤田五郎。
斎藤君の修めた流派は謎が多いが、天然理心流以前は一刀流という奇妙な剣術を修めていたとある。他にも無外流という説があり、警視庁に勤めている間に修めた、ともある。
まとめてみると、流派ははっきりしないけど、とにかく強かった、ということになるらしい。鷹雪君を後の禍として除こうとする斎藤君が、私は気懸かりでならなかった。
そしてこのプリン、すごく美味しいんだけど。
妻が洋菓子店で買ってきたプリンはとろける舌触りでカラメルの苦味と甘味のバランスが抜群である。もう一個、食べたい。ダイエットは明日からするから。私はそう思いながら書斎で甘味に耽溺していた。
食べ終わると急激な眠気に襲われ、私は目を閉じた。
牡丹灯籠が一つ。
闇の中にぽっかり浮かんで見える。
鷹雪君と斎藤君がいる。――――斎藤君は抜刀している。
ぞっとした。
彼の白刃は恐ろしい。漲る殺気が私にまで伝わる。
だが、なぜか動かずにいる。いや、動けないのだ。
鷹雪君が呪言を唱えている。
「天魔外道皆仏性・四魔三障成道来・魔界仏界同如理・一相平等無差別」





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