アイリッシュコーヒー
私はまだ研究を続けていた。
沖田君に加えて、土方君、斎藤君と研究資料を集めてみた。
生きた年齢の違いゆえか、土方君と斎藤君の本は、沖田君のものと比べ、厚みがあった。アイリッシュコーヒーを飲みながら、彼らの人生を辿る。アイリッシュコーヒーは熱いコーヒーにウィスキー、生クリーム、砂糖が加えられた飲み物だ。甘味と苦味、最後に口にざらりと残る砂糖の味が何とも言えない。
土方君は十番目の子供で六男だったそうだ。
土方歳三義豊。義豊が諱(実名)である。
十番目の子と言えば農家では余分に食糧を減らすと思われそうだが、土方君の生家は「大尽」と呼ばれ、村役人から外れてはいたものの、持高三十九石の豪農(上農)だったそうな。多摩郡の大半の農民が三石弱だから、これは大したものだと判断出来る。言わば富裕層で、学問への造詣も深かった。後に土方君は江戸市中の町家に奉公に出されるが、店の人と喧嘩したり、女性関係で色々あったり、まあ、少々、やんちゃだったようだ。二度目の奉公明けで、武人になりたいと一念発起。十七歳で天然理心流に入門する。剣術修行に明け暮れながら石田散薬を売り歩いたというエピソードは余りに有名である。
土方君は石田君だった時期もある。興味深い。書道を学んだり、インテリめいたこともしている。
「しれば迷い しなければ迷わぬ 恋の道」
土方君の有名な一句だ。
上手い下手は別として、土方君にそういう句を詠ませる素地は、実際にあったのだ。
「アイリッシュコーヒー、お代わり―」
「自分で作りなさーい」
ちぇ。





バイオレット、バイオレット、シークレット。連載中です。