表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
105/136

ちくり

挿絵(By みてみん)

 それでも明日はやってきて、仕事に行かなくてはならない。

 私は時折、虚ろな心持ちになりつつ、書類と格闘したりして、外回りにも出たりして、家に帰った。沖田君たちに早く会いたかった。


 縁側には沖田君、土方君、斎藤君の三つの背中。

 ほっとする。

 彼らもまた、私の顔を見て、心なしほっとしたようだった。

 (うぐいす)色の花を象った練り切りを食べている。妻が私にもお茶を運んでくれた。

 今日は少し遅くなった。夏の長い日が沈んでいる。紫紺の頃合いだ。


「幾つか、変わったな」


 土方君が口火を切る。私は練り切りを一口食べて、頷いた。


「晴雄さんが長生きしてた!」

「いや、それは知らんが」


 やや呆れた顔をされる。それから、微笑。

 優男の微笑は、女性には破壊力があるのだろう。


「さんなんさんが、生きていてくれました」


 そう言う沖田君の最期は、変わらなかった。享年二十七歳。

 ちょっとしんみりしてしまう。


「ああ。時を超えた甲斐が、それだけでもあるってもんだ」


 土方君が穏やかな顔で湯呑を呷る。

 その言葉に私はじんときた。


「さんなんさんの子孫の顔を、見てみたいもんだな」


 それには私も同意する。同意して、胸がちくりと痛んだ。

 最期まで新撰組の為に生きた土方君。剣に殉じた沖田君。明治まで永らえた斎藤君。彼らに対して私は、安穏と愛する家族に看取られて死んだのだ。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ