ちくり
それでも明日はやってきて、仕事に行かなくてはならない。
私は時折、虚ろな心持ちになりつつ、書類と格闘したりして、外回りにも出たりして、家に帰った。沖田君たちに早く会いたかった。
縁側には沖田君、土方君、斎藤君の三つの背中。
ほっとする。
彼らもまた、私の顔を見て、心なしほっとしたようだった。
鶯色の花を象った練り切りを食べている。妻が私にもお茶を運んでくれた。
今日は少し遅くなった。夏の長い日が沈んでいる。紫紺の頃合いだ。
「幾つか、変わったな」
土方君が口火を切る。私は練り切りを一口食べて、頷いた。
「晴雄さんが長生きしてた!」
「いや、それは知らんが」
やや呆れた顔をされる。それから、微笑。
優男の微笑は、女性には破壊力があるのだろう。
「さんなんさんが、生きていてくれました」
そう言う沖田君の最期は、変わらなかった。享年二十七歳。
ちょっとしんみりしてしまう。
「ああ。時を超えた甲斐が、それだけでもあるってもんだ」
土方君が穏やかな顔で湯呑を呷る。
その言葉に私はじんときた。
「さんなんさんの子孫の顔を、見てみたいもんだな」
それには私も同意する。同意して、胸がちくりと痛んだ。
最期まで新撰組の為に生きた土方君。剣に殉じた沖田君。明治まで永らえた斎藤君。彼らに対して私は、安穏と愛する家族に看取られて死んだのだ。





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