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冷奴
帰りがまた難儀だった。だらだらと汗を流しながら帰路に就く。
すぐに晴雄さんちのかき氷が恋しくなった。
刀、道に置いていったら駄目かしらん。
そんな埒もないことまで考えてしまう。
もちろん実行には移さないが。
小常さんの家に戻ると、新しい着流しに着替えた。心得ていた小常さんが、絞った手拭いを渡してくれる。この家に風呂はないそうだ。銭湯も今はそれどころではない。ただ、燃えた木材が多く出るので、銭湯としては歓迎する事態だろうということだった。火事が起これば銭湯が儲かる。もちろん、銭湯そのものが焼けては元も子もないが。
小常さんが酒の入った徳利と、冷奴に刻み生姜を乗せたものを出してくれた。
斎藤君と、鷹雪君と一緒に座敷で頂く。
豆腐は絹ごしでつるりと咽喉を通り、刻み生姜の風味が爽やかに鼻腔を抜ける。
そして酒。
美味しい。
土方君たちの首尾はどうなっているかなど、今の私には思案の外だった。





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