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【16話】ロザリアって何者?




「あ。そういえばロザリアはどこにいるんだ?」


 ベッドから抜け出し着替えを済ませた俺は、廊下で待機しているユラに尋ねた。

 壁越しにユラが咳き込むのが聞こえてくる。

 彼女の様子から察するに、ロザリアは近くにいないのだろう。

 目覚めた場所は宿屋の一室。

 部屋にはユラがいてくれたが、ロザリアの姿はついぞ見えなかった。


「ロザリアは外で待っているわ」


 ユラは落ち着いた声音でそう告げる。

 

「なんで外? 直接部屋に来てくれても良かったのに」


「よく分かんないけど『私は手駒の看病なんかはしない。私はやることがあるから、手駒1号が起きたら、二人揃って所定の場所に来い』……って」


 ──本当に意味分からんプライドだな。


 ロザリアの思考が読めない。

 一貫して最強のクランを創ろうとしているのは伝わってくるが、それ以外の行動原理がまるで意味不明だ。

 

 扉を開き、俺は廊下に出る。


「まあいいか。ロザリアのところに行こう」


「その前に」


「────?」


「朝食、食べてないでしょ」


 ユラはそれだけ告げ、さっさと歩いて行ってしまう。

 確かに腹は減っているし、なんなら喉もカラカラだ。

 俺は大人しくユラの後を追った。


「らっしゃい! ご注文は?」


「朝食Aセットを一つ。キルは?」


「じゃあ俺も同じので」


「同じのを二つください」


「かしこまりました! 少々お待ちください!」


 朝食は宿内部に併設されているレストランで摂ることになった。

 テーブル席にユラと対面する形で座る。

 改まってこうして食事をするとなると、少々気恥ずかしい。


「ねぇ……キル」


「あ。なんだ?」


「ロザリア……彼女って、一体何者なのかしらね」


 ガラスコップに入った水を口に運びながら、ユラは窓の外を見据えていた。

 質問の内容は俺にも答えられない。

 俺も彼女と同じように、ガラスコップの水を口にする。


「……何者、なんだろうな」


「少なくとも私たちよりは強いわよね」


「それはそうだな。ロザリアからしたら、俺らなんか吹けば飛ぶような羽毛みたいな存在だろ」


 そう告げた瞬間、ガタンと大きな音が響いた。

 ユラがテーブルに膝をぶつけた音だった。


「待って……そんなに強いの?」


「いや。そりゃあんな禍々しいオーラ纏ってたら、嫌でも分かるだろ。あれはもう人の域を超えてる」


「オーラなんて……私は何も感じなかったわ」


「は?」


「え?」


 ──嘘だろ。あんな怪物みたいなやつのオーラをユラが感じられてない!?


 そう言えば、前にロザリアが言っていた。

『格が足りない者は、自分の纏う風格を感知できない』と。

 それが真実なのだとするならば、ユラにはロザリアの気配を正確に掴めるだけの格が足りないということになる。

 そんなことがあるのだろうか。

 俺からすれば、彼女は俺なんかよりもよっぽど強い。

 格も俺より高いと思うのだが。


「何も感じなかったって……本気で言ってます?」


「え……ええ。私には彼女に関する一切の気配を感じられませんでした。本当にそこに存在していることすら、分からないくらい」


「そう……ですか」


「逆にキルは、彼女の気配が分かるんですか?」


「まあ。マジでヤバいってのだけは認識できる……初めて彼女と出会った時、絶対に逆らってはいけないと俺の本能が訴え掛けてきたからな。ロザリアは俺たちの認識の外にいる──怪物だよアレは」


 ロザリアの実力は未知数だ。

 何故なら俺自身が彼女の戦闘した場面を見ていないから。

 どれだけ圧倒的な力を持っているのかは、憶測でしか語れない。

 ただ、今の俺やユラが立ち向かったところで秒殺されるということくらいは分かる。

 それだけの強さがロザリアにはある。


「お待たせしました〜朝食Aセット二つです!」


 神妙な面持ちで黙り込んでいると、頼んでいた料理が目の前に並べられた。


「取り敢えず食べましょうか」


「……だな」



 ロザリアに関する謎は尽きない。

 しかしそれを議論し続けていたら、きっと日が暮れてしまうだろう。

 俺やユラはまだ彼女の核心には迫れない。

 今はただ彼女の『手駒』として、その野望を成就させるために最善を尽くすだけだ。


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