2018年 冬
今年もまた、雪の季節がやってきた。
既に荒れ地と化した庭に存在するのはアシタバくらいだろうか?
結局未だにサンカヨウは芽すら出す気配がない。
そう言えば黒い百合の花、はどうなっただろうか? 芽くらい出たのかな?
12月最後の連休。そう、年越しの為に仕事が長期休暇に入る初日の出来事。
1m程の雪に埋もれた庭を見ながらそんな事を思った。
よし、明日は百合の入ったプランターを発掘しよう。うん、とりあえずそんなつもりでいよう。
百合の入ったプランターを雪から救出して数日後。様子を見に行くと愕然した。
今、目の前にあることをありのままに言うぜ?
プランターになみなみと水が入っている。
いや、何言ってるんだって思うかもしれないが、本当にプランターに表面張力するくらい水が入ってるんだ。
慌てて斜めにして水を排出。
が、水は表面だけでなくプランターの奥深くまで浸透していたらしい。
奥から流れ出る水に戦慄させられる。
何故だ? プランターは水を溜めない筈だろう? 排出される筈だろう?
なぜ黒百合が水中花になってんだ!?
そして、気付いた。
プランター側面、地面にほど近い場所に丸いキャップが挟まっていることに。
恐る恐る、キャップを外す。
溜まっていて逃げ場を無くしていた水がどばっと溢れた……
ああああああああああああああああああああああああああああっ!?
心からの絶望が口に出る。
黒百合に使ったプランターの排水溝は、買った当初のまま、キャップで塞がれたままだったのだ。
そりゃ排出されない水が溜まりに溜まって水没するに決まっている。
もはや黒百合は絶望的だ。
折角つぼみが出来たというのに、これから茎が伸び花開かんとしていたのに、ああ、やってしまった。
彼らの命を奪ってしまったのだ。浅はかなオイラを許しておくれぇ。
プランターを掻き抱き、泣いた。
愚かな自分により引き起こされた悲劇に慟哭する。
もはや、生存の芽はないとしか言えなかった……
二月に入り、寒さも一段落して来た頃。
そろそろ最後の大雪が来るかもしれないな―と思いながら庭を見回す。
萎れた鷹の爪はもはや生還は不可能。
ナスも最後の一個がしなび、雪のせいでぐっずぐずになっている。
アシタバは? 水気を含んでぐっちゃぐちゃだ。でも安心を。彼だけは生還出来ることは既に数年前に確信してる。植えて二年後程に花をつけるのさ、そして青虫たちに全て食われて根元から黒く変色していくんだ。知ってるさ。それまではまた復活するってことを。
件の水中花は? 一応今までと変わらずにプランターに居座っている。
もう絶望的なのだが捨てるに捨てきれない。まだ希望があるように思えてしまうのだ。
百合の一種だしもしかしたら水中花からの再開花もあるのではないかって。
雪に埋もれた庭は完全にリセットされてしまっている。もはや生き残っているのは雑草だけである。
けれど、プランター植えのエルダーフラワーは元気だな。去年の葉こそ全部散らしているけど既に今年用の蕾が付きまくってる。強いな。ああ、強い。サンカヨウなんて根っこのまま出てきすらしないってのにさ。
春になるのは間もなくだ。
もう二月も20日を越してしまった。
今年はそこまで雪が降ることも無かったため、絶望的な悲劇は起きなかった。だが、庭の状況は極めて悪い。
生存者は皆無に等しく、唯一生存していると思われるアシタバも萎れてへにゃりと地面に張り付いている。これ、ちゃんと新芽生えてくるのか?
そして庭に無造作に捨てられている袋を発見。なんでラン○パック? 誰だここでランチ○ック喰いやがったアホは!?
とりあえずその場で地団太踏むことにした。
袋は? そのまま放置だ。何故他人が捨てた物を拾ってやらねばならぬ。おのれ名も知らない誰かめ。
しかし、雪は今年は殆ど降らなかったな。
いい事ではあるけれど、去年や一昨年と比べると物足りなさもあるような……
いや、それでいい。むしろそれがいい。
雪など殆ど降らないにこしたことは無い。
例え今年の雪祭りに作ってた灯篭が一日も経たず溶けていたとしたって、雪祭りなのに雪が殆ど無かったとしたって、祭りなのに寂れた感じしかせず屋台のやの字も見当たらなくたって、問題は無いのである。
雪かきが大変だしね。
さーって、もうすぐ春か。
新しい庭の仲間たちは何にするか、今から考えて行かないとな。
また変わった物育てるべきか、それとも常道を行くべきか、緑のカーテン用に何を作るかも考えないとな。とりあえずメロンは今年は止めよう。
次は西瓜かなー。もしくはまくわ瓜? 今から楽しみである。
そして気付く。もう2月25日。春が既に数日だ!?




