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2018年 秋

 本日はブドウの種を埋めてみよう。

 ついでに黄金桃食べた時の種も埋めてみよう。

 そう思った日曜日のことだった。

 土砂降りだった。

 諦めた。


 そして次の日曜日。アイヌの恋? とかいう黒ユリの苗を手に入れ先週分と一緒に植えようとしたところ、なぜか無い。

 そう、ブドウの種と黄金桃の種は親により捨てられていたのである。

 泣いた。それはもうorzな状態で漢泣きだった。


 埋めるから捨てちゃダメだって、言ったじゃないかぁーっ。うおおおおおーん。


 赤茶色のプランターに百合の根を植える。

 どっち向きが根っこなのかわからなかったので上下適当に。ちゃんと上に伸びると良いな。

 作業が終わり、そう言えば最近庭見てないな。と覗いてみれば……


 庭は、朝顔に、占領されていた……


 あらゆる作物に朝顔が巻き付き締め上げ、己の花を存分に咲かせ、誇るように種を付けまくっている。

 枝豆は日陰に追われ、プチトマトはやせ細り、アシタバは葉に隠され、鷹の爪は茂みに隠れ、ナスだけがそれなりに長い実を付けていた。

 他の植物? もはや朝顔に隠れてわから……違う、違うぞ!?

 これは朝顔の葉っぱじゃない。なんだ? この葉は何者だ?


 無数に這いまわる蔦を辿ってみてみれば、一つの鉢植えから伸びていた。

 巨大な葉っぱと連なる蔦。

 四方八方に広がる様は、まるでビオラ○テのよう。


 あ、これ、おやっさんが育ててるサツマイモだ。


 庭は今、三国に別れて戦争が行われていたのである。

 中央の大勢力朝顔はヒサシ用の緑のカーテン化もしていて他の植物よりも大繁殖。東にはこんもり盛りあがった青紫蘇が穂先を生やして生え回り、西をサツマイモの蔦が浸食する。

 もはや他の植物達が細々と生きていることそのものが奇跡と言える状況だった。




 その日、庭を占拠統一せんと三大勢力が争っていた時だった。

 中央の朝顔が蔦を絡め、サツマイモと絡み合う。

 双方譲らぬ侵略戦。

 隙を見せた朝顔に東から迫らんとした青紫蘇たちが蔦のトラップに絡め取られ苦戦中。

 謎の巨大蜘蛛が青紫蘇とエルダーフラワーを股に駆ける盛大な巣を作り、風に揺られる日であった。


 突如、戦場に恐怖の大王が現れる。

 驚き慌てる朝顔に無慈悲なる死神の鎌が振るわれる。

 ズバリ、ズシャ、ブチブチブチッ。


 逃げまどう朝顔たちは必死に抵抗した。緑のカーテンを築き篭城を始める。

 だが、そのカーテンに使われていた緑の網ごと、父は根こそぎ朝顔を刈り取った。

 朝顔たちの悲鳴が轟く。


 ど、どうなってもいいのか?

 捕虜にしていた四角豆や枝豆を見せつけるも、恐怖の大王は捕虜ごと消し飛ばした。

 朝顔たちになす術などなかった。

 ただ、築き上げた王国が無残に消え去るのを見つめるしか出来なかったのである。


 朝顔を滅ぼした悪夢はサツマイモにもその手を伸ばした。

 ズシャ、ズバッ、ブチブチブチッ。

 ぐぎゃー。と悲鳴が聞こえそうな程の大量虐殺。

 サツマイモの蔦が消し去られ、植民地と化していたアシタバが久々の陽射しを受ける。


 青紫蘇たちはその光景を、ただただ震えて見ているしか出来なかった。

 彼らは勢力を伸ばす事をしていなかったために狩り尽くされるのを免れたのだ。

 こうして一大勢力を誇った朝顔は狩り尽くされ、サツマイモは元の鉢から出られない状態に、そして青紫蘇だけが群生を許された。


 日の目を浴び始めた鷹の爪、ナスビ、アシタバが青々と成長を始る。しかし、既にプチトマトはその命をすり減らし、枯れ木となっていた。リングのコーナーに座り燃え尽きたように、細く、細く立ちつくしていた……

 赤茶けた荒野が広がる庭より、恐怖の大王は去っていく。

 その荒野には、大量のムカゴだけが残されていた。


 そして、ひょこ、ひょこと、新たな朝顔の種子たちが顔をだす。

 彼らが懲りることはない。

 また一大勢力を築くため、子孫を繁栄するために侵略を続けるだろう。

 だからきっと、恐怖の大王は再び現れる。

 彼らが侵略を諦めない限り、庭の悪夢は終わらないのである。




 奴らの季節がやって来た。

 食事を終えて食器を洗おうとしたした時だ。蛇口の取っ手を押そうとした次の瞬間違和感を覚える。

 なんだ? と思えば流し台にぽたり、落下する物体。


 呼んでもないのにカメムシさんである。

 カメムシの頭を思い切りタップしました。

 結果、強烈な臭いが周囲に立ちこめ、流れた水に乗ってカメさん退場。

 絶叫が当りに木魂した。


 そんな不運に見舞われた本日、家の周囲にはカメムシの群れが百を越えて押し寄せてます。

 どうやら朝顔で作った緑のカーテンを求めてやって来ていたようで、既になくなっていたので壁にくっつき家に入って来ようとしているらしい。


 これはつまり、緑のカーテン取った親父のせいか!?

 おのれ親父ェ――――っ。

 逆恨みと共に今日もペットボトル片手に奮闘するのだった。

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