2017年・秋
七月後半、ころたんの死を乗り越え、植物達はすくすくと育つ。
やはり目に付くのはトマトだろう。ミニトマト共々予想を越えて育っている。
ナスは完全に命を取られたようで、もう風前の灯だ。
パッションフルーツもまたすくすく育ち、アリ達が行進している姿をよく目にする。
それはいいのだが、なぜかヤグラネギが根こそぎ消えていた。
……なぜだ?
自然に枯れた訳ではない。
あんなにすくすく育っていたのにそこになかったかのように消え去っていた。
家の冷凍庫には切られたネギが輪切り凍結されていたのだが、まさか……
い、いや、そんなはずあるまい。あは、あはは……
追伸、ころたんの後を追うように、レモーネメロンもまた、逝った……
残るメロンはベランダで育てているレモーネ一人。彼もまた危機を迎えていた。
病気だ。葉が白く成りだしていたのだ。ヤバいと思って幾つか葉を切り裂いておく。
早く、早く雌花を、雌花を咲かせるんだ。雄花はもういいよっ!?
八月の連休。プランターのレモーネメロンは未だに雌花を咲かせない。雄花すらも咲かせなくなり、茎の根元が白くなりだしている。
もう無理か? と思うが茎の方は未だにすくすく育っている。これは大丈夫なのか? それとももう、無理なのか? とりあえず雌花を付けてくれ。
庭はもはやカオスと化していた。父が植えていた芋の葉に絡みつき覆い隠し、下にあったアシタバを完全に日陰に追いやったのは朝顔。
ミニトマトに絡みつき、絞め上げているのも朝顔。
レモーネの亡骸に絡みつき、グリーンネットに蔦を這わせているのも朝顔。
咲き乱れる白い花に、もはや庭は占領されていた。
空きスペースには青紫蘇が咲き誇り、前に植えたドラゴンフルーツの葉肉部分から新しい葉肉が出現。なんとか生き残っているようだが、多分冬場は越せまい。庭から引き上げプランターに入れるべきだろうか? まだ、ドラゴンフルーツを諦めたつもりはないのだ。
それにしても、プランターの容器大きくしただけでわっさわっさ生えたなエルダーフラワー……
九月初旬。未だレモーネメロンに雌花は咲かない。
やせ細った蔦は垂れさがり、黄色く色づき始めていた。
根元はさらに白くなり、しかし雄花は未だにぽつぽつと咲いている。
庭の朝顔を刈ってみた。流石に見ていられなかったよ。
トマトが成長途中で巨大化をあきらめ赤くなっていた。
小さ過ぎたので畑の肥やしに埋めておく。
おや、朝顔の葉の裏に丸々と太った茶色い芋虫ちゃん発見、角付きだ。指揮官機です。
ぺいっと放り投げ、ふと思い立ち朝顔の葉を一つちぎると上に乗せてやる。そして川に放流。
大きくなれよ~。
時計草の花が咲いていた。
と、思ったらパッションフルーツの花でした。ウチに時計草は育っちゃいないからおかしいと思ったんだ。
たった一輪だけ咲いているその花は、朝顔とフルーツトマトの茎に巻き付いた状態だった。
朝顔にすら負けてない強靭な生命力に思わず脱帽。プランターで育ててるのに凄い成長で庭を席巻している。
アシタバは無事、トマトも何とか無事、しかしナスは完全消滅、甘長とフルーツトマトが朝顔に巻き付かれながら必死に生存し、黄色い苺が隅っこでひっそり咲いていた。
おいおい、ブルーベリーの木にまで朝顔巻き付いてるじゃないか。
こっちは朝顔の蔦に朝顔が巻き付いて絡み合って凄いことになってるぞ!? トマトが倒れないようにと付けた串にこんもり巻き付いた朝顔を解いて行く。無理、諦めた。切り裂き細切れにして根こそぎ排除することにした。きっと、来年も生えて来るんだろうなぁ。
九月の連休。台風一過。
ベランダのレモーネについに念願の雌花が付いた。さっそく小筆を使って花粉付け作業。
しかし、すでに九月だよメロンさん。なぜ七月でも八月でもなく九月に雌花付けた? しかもめっさわっさり。
あれかな? 黄色くなった一番最初に伸びてた蔓切った御蔭で栄養が回りだしたのかな?
庭は凄いことになっていた。
中央左端と言えばいいのかな? そこに置いていたパッションフルーツが巻き付いた物を引き寄せていらっしゃった。トマトが、フルーツトマトが引っ張られ、パッションフルーツ自体を覆い隠している。
自業自得だけどどうすんだこれ!?
朝顔消えたらお前が問題児になるのかよっ!?
どうでもいいけれど、父が植えてたリンゴの木が台風で鉢ごと倒れてました。
……で? 種植えてみた桃は一つも芽生える気配ないんだけど、何故ですか?
十月の連休。庭ではトマトとフルーツトマト、アシタバ、長芋?、甘長、青紫蘇、黄色イチゴが生存中。
プランターのまま庭に置いてあるのはパッションフルーツ、山椒、アボガド、ブルーベリーに種類の分からないイチゴたち。
庭じゃないけどプランターに植えてあるのはエルダーフラワー、アルブカ・スピラリス、苺ミルクセージ、他、親や祖母の埋めた花が数点。
ベランダには引き上げた小ぶりなドラゴンフルーツとレモーネメロン。
レモーネはついに実が付き膨らみ始めた。気温は冬に向けて下がり始めた。
メロンが出来るのが先か、寒さで消えるのが先か、頑張れメロン! 負けるなメロン!
ドラゴンフルーツは死に掛けから再生したせいかだいぶ小さくなってしまっている。
正直ここから再生できるかと言えば不可能じゃないかな? と言わざるを得ない。
それでも彼らの生命力に賭けよう。なせば、なるのだと。
さーてそれじゃあレモーネメロンをベランダから室内に入れてやるかー。
レモーネちゃん付けた実を大きくし……のあぁぁぁぁぁっ!?
い、今、動いた。葉っぱ動いた!? まさか意思を持ってビオ○ンテ化してしまうのか!?
ぴらっ
葉の裏に、二匹のカメムシさんがデート中だよっ♪
ふぬあっ!!
シャキンと葉っぱの茎から切り去り、ベランダから葉っぱを風に流す。
ハネムーン旅行、行って来な。
どうやら冬籠りの為に奴らの進攻が始まったらしい。
カメムシ共との闘いが、再び幕を開けようとしていた――――




