2021年 夏
七月。
パッションフルーツの蔦をピクニック気分で歩く蟻たちが行きかう庭で、ついにパッションフルーツの花が咲いた。
前回もここまでは来たのだ。
ここから先が育たなかっただけだ。
さらに西瓜の花が咲きだした。
雌株が出来てたので雄株をぶちっとちぎって強制受精。
いい男ではな無かったかもしれんが諦めて膨らむがいい。
畜生うらやまけしからん、彼女欲しい。
ついでに、ネット経由でイチゴのタネを買ってみた。
まさかの黒イチゴが成るらしい。
ワクワクしながら到着まってると、中国からの怪しい紙袋到着。
こ、これは今噂の謎のタネ送り事件!? ついに我が家にも来ちまったの……あ、これ頼んでた黒イチゴだ。
とりあえず適当に土に埋めて水やってみるか。できるかな?
数日待つが、未だに双葉すら出てくる気配がない。
これは、長期戦の予感がする。
8月、ついにパッションフルーツが実を付けた。そして、スイカも。
でもさぁ、なんでお前たち一個しか実付けてないの?
もうちょっと花咲いてたよね?
そして哀しいお知らせだ。
長芋の群れに囲まれたせいで、ナスが、花は咲いても実が付かないという謎現象が発生。ナスの花って全て実になるんじゃなかったのか!?
パッションフルーツはしばらく緑色だったのでこのままでいいのか不安だったものの、台風が過ぎ去った頃の事、ちょっと触ったらぽろりと取れた。
意外とすんなり取れたな。
包丁で割ってみる。
うん、追い熟した方が良かった。
もうちょっと置いとくべきだったな。
でも、味はパッションフルーツだ。
タネが沢山あるし硬いせいでなかなか食べるのに苦戦したけど、一応収穫できた。
スイカは8月下旬、幹が腐り始めてたと言うことで親が収穫して来た。
ちょっと当たってたようで一部が灰色みたいになってて焦ったが、切ってみると普通にみずみずしい黄色いスイカが成っていた。
あれ? おかしいな。これ、オレンジ色の実に成るんじゃなかったっけ?
うん、まぁ、みずみずしい美味しいスイカだったよ、うん。なんで色違ったんだろう?
熟せばオレンジ色になるとか? でも腐りかけだったし……
どうやらこれは永遠の謎になりそうである。
今年は冷夏だったためか、作物の実りはかなり悪い。
これはもうきゃべつかはくさい育てて見るしかないかなぁ。
でも虫がすごそうなんだよなぁ。
黒イチゴは一株除いて全滅だった。
なんかしらんが全く出る気配がない。カビが発生し、謎の白い生物が闊歩し始めても全く出て来る気配がない。
一個だけ、双葉がでてたので、鉢植えに移してみたんだけど、ここにもいくつかばらまいたんだぜ? 一つも出ないってどういうこと?
結果、数十の種たちの遺体をかき分けるようにして、たった一つの双葉が三つ葉へと進化するにとどまった。
ほっそいなぁ、なんかすぐ散りそうだ。大丈夫なのだろうか?
少しずつだけど成長してるし、こいつだけはガッツがある、多分ちゃんと成長してくれるはずだ。
さて、黒イチゴはこれでいい。後の問題は……フェイジョアとフィンガーライムだ。
ネットを調べた様子だとフィンガーライムは今までのようにいろいろと肥料をやっておくのは失策らしい。
彼らにとっては栄養が少ない方が実を付けやすいらしいのだ。
むむむむむ、これは今年は失敗かな? 来年また頑張ろう。枯らさないようにしないと。
フェイジョアは最初の幹が枯れたからなぁ。
側面から結構出てるからまだまだ現役だけど、気を付けて育成していかないと。これも多分来年以降まで待った方がよさそうだ。
九月に入ったらそろそろ中へ持って入らないとなぁ。
残暑もこの分だと余り期待できないし、さっさと中に入れて冬に備えた方がいいかもしれない。
冬場は冷たい風に霜、大雪と植物にとって辛い事がオンパレードだしな。
あとは長芋だ、アレは収穫して行かないと恐ろしいことになっている。
収穫時期って何時だって。なんかもう全体的に掘り返さないといけない気がする。
結局栄養云々もほぼあいつらに持って行かれたんじゃないかと思うし。そりゃスイカも小玉のまま腐るわ。
メロン成長させなくて良かった。アレだったら確実にやせ細って腐ってたところだ。
ただ、青紫蘇はすごいな、朝顔共々庭のメインメンバーに仲間入りしてやがる。
アホみたいに成長してるし、葉っぱが食われてるところから虫たちにも人気の野草と化しているようだ。てんぷら美味しいのでこれはこのまま。でも朝顔、テメーは駄目だ。
なんで色とりどりの朝顔の種から生まれたのに白一色になってんだよ!?
ええい、どっから生えた!?
まきつくな、エルダーフラワーに巻きつくんじゃ……フェイジョアーっ!! てめぇら。フェイジョアにまで巻き付いたのか……
ちくしょう……ちくしょうっ、駆逐してやるっ!!
某巨人に対する怒りをぶつけるように宣言する今日も、庭は混沌に塗れているのだった。




