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2021年 春

 4月になった。

 春めいた季節に呼応して、パイナップルを外へとだした。

 数日後、京都に行く事になり、帰って来ると家に帰って来るなと追い出され、二週間。


 ようやく家に帰りついた私を待っていたモノは、霜にやられ、葉先が枯れ、中央が薄くぶよぶよになったパイナップルだった。

 まだ寒い春の日に外に出したがために霜にやられ、雨の多さにぶよっと膨れ、水分過多で死にかけているパイナップルを、私は救出することすら敵わなかった。


 変わり果てた姿を掻き抱き、空におわす神々を睨む。

 なぜだ? なぜ私達にこんな試練を与えるのだ、神よッ!

 誰か、誰か助けてくださいっ、パイナップルを、ピーチパインを助けてくださいっ! 普通のパイナップル位に葉っぱが生い茂ってたんです誰か、誰かぁ――――っ!!


 ……と、言う訳で、仕事で京都に行ったがために多大な不幸を背負わされ、ピーチパインが逝きました。ぴえん、越えてぱおん、越えてぺよん、むしろジュン。って奴ですね。


 さて、とんだ想定外な日々を越えた先、スマホを新調したついでに新しい苗を買うことにした。

 今回買ったのはいつものアマナガ、ミニトマト、ちょっと変わったオレンジ色の西瓜、パッションフルーツ。などなど。

 なんかこう、真新しい植物を植えたい気分なのだけど、売ってないから仕方ない。取り寄せしちゃおうかな?


 庭では冬を越えて木へと化したブロッコリーが中央に鎮座しており、白い生物や青虫君たちの寝床兼食料庫になっている。

 なんかこれ、どこまで成長するのか見てみたくなったからとりあえず放置してるけど、そのまま昆虫たちに解放しておいてやるか。

 好きに使いたまえ。だがカメムシ、お前は駄目だ。


 葉っぱに乗って川に放流。旅立てカメムシ、お前には川下りがよく似合う、たぶん。


 蜂が飛んでくるようになったが、近くに巣でもあるのだろうか?

 自宅の天井とかだったら嫌だなぁ。

 隣の部屋によく蜂の死骸が落ちてんだよ、どっから入ったのか分からないんだけど、もしかして……いや、きっと気のせいだ。ただ窓の隙間から迷い込んだだけさ。黄色いスズメバチさんは方向音痴なおちゃめさんなんだ。


 そう言えば、この前道歩いてたらでっかいスズメバチっぽい死骸が落ちてたな。ちょっと赤っぽい個体。アレって女王蜂? 数日後には消え去ってたけど、アレはでかかった。普通のスズメバチの二倍か三倍はあったよ。


 あ、そうそう、なんと枯れてしまったと思っていたフェイジョアに葉っぱが付き始めた。

 きっと生きてる、そう思って残しておいて良かった。

 まだフェイジョアが生還する目は潰えてなかったんだ。


 となると、まさか、パインもまだ、生きてる?

 もはやぶよぶよでところどころ枯れてるけど、まだ、生きてるかも。

 そうだ。きっと生きてる。生きてるんだよ。

 よし、水やりして生かして行こう。

 きっとまた復活してくれるはずさ。


 六月。

 タネまいてもいないのに青紫蘇がすくすく育ち始めた頃、パインがまだ生存しているらしいことが判明した。

 枯れた葉っぱの中央から新しい青々としたのが生えていたのだ。

 さすがパイン、生命力は半端ない。

 今年は必ず冬越しさせてやるからな!


 さて、今年は何を植えようか?

 さすがにもうメロンは諦めたよ。

 代わりにオレンジ色の実がなる西瓜を植えることにした。

 緑のカーテンのために蔓を生やさせようと思うのだが、既に長芋共が跳梁跋扈しているせいで網に掴まり辛そうにしている。大丈夫だろうか?


 今年もミニトマトを植えた。

 基本出来るのは分かっているので植えたら放置だ。きっと沢山トマトが成るだろう。

 あとはあまなが。これはもはや定番品になった。

 さらにナスを一つ。毎年ちょっと変わったナスを買い求めてるんだけど、今年はちゃんと成るだろうか? 普通のナスではなく細長い奴。


 パプリカっぽいのも植えることにした。これ、ちゃんと成るのかね?

 あと今年もパッションフルーツを買いました。

 前回はよくわからないうちに花が枯れてしまったが、今年こそはせめて一つくらい実を付けてほしい。ただただ蟻の楽園に成られては困るのだ。


 フェイジョア、そしてフィンガーライムは未だに動きがない。

 そろそろ実が出来ても良い気もするが、やはり夏か。

 夏なのか? 夏にこそ実が結実しちゃうのか!?


 って、あれ? おかしいな?

 ブロッコリーの木……あれ? あれ?

 なんで、萎れるように萎びてんのかな? かな?

 つい先日まで普通に葉っぱもタネも着いてたよね?

 青虫さんが大量にいたから青虫マンションみたいになってたよね?

 なんで……萎れ……


 畜生、やっぱり青虫共は放置してちゃだめだったんだ。

 あいつら、葉っぱ全部食い破って光合成出来なくしちまいやがった……

 枯れ木と化したブロッコリーを胸に抱き、漢泣きする雨季のある昼下がりであった――――


 安らかに眠れ、友よ……

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