2020年 秋
冬支度へ向け、三つの鉢植えを室内へと移行する。
持ってはいるのはフェイジョア。二年目のはずだが、未だに実が付く気配は無い。おそらく来年付くのだろう。そう期待して夏を待つ。
二つ目はフィンガーライム。
これも二年目の筈だけど実はついていない。フェイジョアよりは元気そうなのできっと来年実をつけるだろう。期待しておく。頼む、付けてくれっ。
そして三つめ。ダメ元で植えたピーチパインである。まさか本当にすくすく育つとは思わなかった。
こいつには期待している。きっと来年にはパインが出来る筈だろう。
……葉っぱの数枚が茶色になってる気がしなくもないけど、気のせいさきっと。
庭に残されたのはいつもの面子。イチゴミルクセージとエルダーフラワー。これらは長い年月冬を越してきた面子だ。面構えが違う。
大雪の日も雪の下で生存して来た猛者である。放っておいてもいいだろう。
ただ、今年力尽きた者たちも居る。
父の育てていた桜の木だ。
確か、母の車に引っ掛かっていた木の枝を鉢植えにぶっ刺した奴だった。
普通に走ってたらしいのだが、タイヤ周辺に絡まってたらしいのだ。よく無事に家まで連れて来たな。何処から付いて来たのかも分からないのでとりあえず育てることにしたらしいのだが、残念、内側から枯れてしまい、今年、お亡くなりになってしまった。
結構大きく育ってたのになぁ……
ついで、リンゴの木も枯れていた。
水が足らなかったのか、土の栄養が無くなってしまったのか、やはり木々を育てるのは難しいようだ。
また、アホみたいに生えていた朝顔や青紫蘇は消えた。
両親による雑草除去作業に耐えきれなかったようだ。
来年また、現れることだろう。
折角冬になるのだし、冬に出来そうな植物植えてみるか。
人参とか? 大根とか? そういえば台風の折に倒れていた細いブロッコリー、まだ生存してたな。今は虫の除去とかしなくなったので青虫たちの共同マンションになっているのだが、流石に彼らの営みを見るのは怖い。ぞわっとしそうである。
結局、いままで育てるために買っていた黄色人参やスイスチャード、ほうれん草などを植えておく。多分春頃に出来るっしょ、ほうれん草? 冬までに出来るんじゃね? 確か二週間くらいで育つ筈だし?
とりあえず育つことの無かった豆類の跡地にぱらぱらっと蒔いて行く。
あの傘が欲しいなぁ。下から上に付き上げるだけで植物が急成長する隣のバケモノと踊れる傘。
そして、二週間。
庭にはクローバーっぽいのが咲きほこり、他の植物は欠片も見当たらない。
……あれ? おかしいな? なんでないのかな?
そろそろ出現しててもおかしくないのにな?
やはり時期か? 時期が駄目だったのか? 九月位に蒔いとけばよかったのだろうか?
人参の蒔きどきはこれくらいの時期だと思ったんだけどなぁ。まさかほうれん草すら出て来ないとは。
いや、まだだ。まだ終わらんよ。
諦めたらそこで試合終了だ。
思い出せ。ピーチパインの成長を。
今こそ家の中にしまってあるが、皆から枯れてると言われ続けていながら成長したじゃないか。
冬だってほうれん草はでてくるさ。そう信じて待っとくんだ。
きっと雪の中からコンニチワしてくれるはず。
今年はなんか大雪降るってよく聞くけど、どうなんだろう? 本当に前みたいに降ったら嫌だなぁ。2メートル程とか全身埋まるって。
結構適当に蒔いたから本当になんかよくわからん植物が冬生き延びそうだなぁ。
ミニトマトが無駄に元気だ。
なぜかミニトマトなのに普通のトマトの半分くらいある巨大ミニトマトが無数に出来ている。
多分他に競合する植物がいないせいだろう。栄養独り占めで巨大化したようだ。
まだ緑のままだけど採取しておけばその内赤くなるだろう。
って、おやっさん、ミニトマト切っちゃうの!?
っていうかもう切った!? 何時の間に……
結局、ミニトマトの栄光は一瞬だったようだ。
後には無残に切り取られた茎の残骸が庭に残るだけだった……
冬に向け、庭もまた寂しくなってしまった。
後はブロッコリーの葉がまだ残っている。これ、何時まで残しとこう?
前回切ろうとした時はまだ青虫が残ってたから放置したんだけど、いい加減切っても……
いや、まだだ。まだおいておける筈。もしかしたらこのまま冬越せるかもだし?
そしたら凄く大きくなったブロッコリーの茎が春から夏に掛けて再び花を咲かせてくれるはず。
美味しく頂ける筈だ。
きっとその筈だ。
できる、よね?
と、いう淡い期待を込めて、ブロッコリーはこのまま放置することにした。
さぁ、そろそろ冬が始まる。この先どうなるのか、楽しみではないか。きっと緑溢れる庭になるはず。荒れ地になるわけがない、そうだろう? そうだよな? 誰かそうだと言ってくれぇっ。




