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2020年 春

 今年もやってきました春の季節。

 枯れ木となったエルダーフラワーも青々とした葉を付け直し、桜のつぼみが花開く。

 コロナウイルスによるなんやかんやで自宅待機が言い渡される中、今年もまた、新たな植物たちが地獄の中庭で産声を上げ始めるのである。


 家の中で過ごしていたフィンガーライムとフェイジョアも外出の機会を経てのびのびと成長を始め、ミルクイチゴセージがもう殆ど枯れ木なのに細々と葉を付け始める。

 父が何処からともなく持ち帰った桜の木が無駄に蕾を付け始めていた。

 この桜、いつ買ったんだろう? 父曰く一年前からあるらしい。おかしいな、知らないぞこのプランターに植えられた木。


 庭を耕す。

 父が植えた長芋たちが続々発掘されて行く。

 こんなとこに植えてんじゃないよ。ここは西瓜様の場所だぞ。

 こっちはまくわ瓜様の居場所だ。その間は葱を植えるんだよっ!

 テレビでやってたんだ、ウリ科の近くに葱植えとけば土壌が殺菌されて病気になりにくいって。ピーマンとかじゃなかったの? とりあえず今年はこいつで行こう。

 ちなみに、普通の葱はなかったのでヤグラネギに鎮座して貰った。既に葱坊主の代わりに触手みたいな櫓がうねうねと伸び始めている。これ、葱じゃねぇよ、奇怪植物だよ。


 今年はアマナガやイエローライムなパプリカなどなど、え? これ黄色いアマナガみたいだけどパプリカなの?

 ピーマン系が多いな今更だけど。

 ついでに買ったのは棒状ブロッコリー。折角なのでちょっと変わったものを育てようと思ったんだ。そろそろネット通販の植物に手を出すべきだろうか?


 とりあえず畝を三つ作り、そこに新種らしいブロッコリーとなんかよくわからないピーマンを植える。色が薄緑でししとうっぽい奴だ。なんとかホルンっていうんだっけ?

 他の場所が余ったのでとりあえず前から家にある種を植える。

 まずは人参と黄色人参をぱらぱらぱら。


 もう一つの畝に四角豆を植え、ホウレンソウを蒔き、黒ゴマを散布。

 最後の畝にはレモンパームだっけ、を撒き散らし、黒枝豆を投げ込み、オカヒジキをお供えする。

 よし、完成。後はまた来週以降だ。


 しかし、ピーチパインは枯れてるんだろうか? それともまだ芽はあるんだろうか?

 外は枯れてるけどまだ緑色が見えるんだよなぁ、諦めない、死ぬまではっ。

 って感じがするからもう少し様子を見ようと思う。


 六月。

 久々に庭に出てみれば、なんかブロッコリーの葉っぱが枯れ枝のようになっていた。

 その枝に纏わり付く緑のうねうね。

 ぎ、ぎぃやああああああああああああああああああああああああ!?

 なんかうねってるのが一杯いる!?

 全部青虫か!? きもっ。これだけいるとさすがにきもっ。

 大小合わせて三十を越える青虫くんが美味しそうに葉っぱに群がっていた。


 青虫君をピンセットで取り除くうねるうねるひぃぃぃぃっ。あ、落とした。

 地面に落下した青虫くんを取ろうと地面を見れば、超長いアリの行列。

 ひぃぃぃぃぃぃぃぃっ!?

 あ、青虫が、青虫くんがくろくそまっているぅっ!?

 慌てて激しくうねる青虫くん。這って這ってアリたちから逃げる。

 なんだ生きてたか。とアリたちは彼を放置して行列に戻っていった。


 よし、アリコロリ設置しよう。

 青虫君の群れには川を下って貰い。

 アリの群れは毒餌を持ちかえって頂いた。

 ブロッコリーの葉っぱを見れば、ところどころに黄色い卵。

 まだ、喰うつもりなのか!? もうブロッコリーくんは死に体だぞ!?


 雨の日にはまた違った生物による被害。

 折角色づいたイチゴ達がてっかてかと光り輝き、ぬらぬらと食われたことを教えてくれる。

 そう、ナメクジの群れ出現である。

 雨の日に、家の壁を這うナメクジさん。

 その数十数匹。

 ぎぃやあああああああああああああああああああああああああ!?


 台所より塩を持ち、壁に向かって投げ捨てる。

 鬼はーそと、ナメはーしねっ。ひゃっはー汚物は萎れちまいなっ。

 次々に落下していくナメクジさん。その下には緑の支え棒の群れ、その下の奥へと落下していく。

 うおぃ、何処行った!? いや、まぁいい。死んだだろ。死んだんだよ。確認するまでも無い。


 そしてふと、気付いた。

 あれ? ミルクイチゴセージの木、こんな短かったっけ?

 なぁ、親父殿、この木、こうなった理由知ってる?

 父は言った。ああ、それ? 枯れてた部分切ったよ。

 何してんのーっ!? テメェの血は何色だァッ!!


 エルダーフラワーだけが青々と生い茂り白い花を無数に咲かせるなか、また一人、古参のツワモノが地に伏したのだった。

 これ、来年まで持つのか? もう細い枝三本くらいしか残ってねーんですが……


 そして父は、数色の薔薇、ポンポンみたいな丸い花、ハイビスカスを買って来て悦に入っていた。くぅ、同じように切り裂いてやろうかその花々……

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