2019年 秋
皆さんは知っているだろうか?
一枚の葉っぱを水に浮かべるだけで葉っぱから葉っぱが生えて双葉となって成長を始める植物を。
そう、コ○プなどで売ってる幸運の葉っぱである。
水に浮かべるだけだし、安かったので買ってみた。
なんか凄い葉っぱが出て来た。
土の中に株分けしてみたが、その後に、水に浮かべたままだった葉っぱからさらに小さな葉っぱたちがでてきてぐんぐんぐん。こいつ、生命力が強過ぎるっ!?
どうしよう、一枚の葉っぱしかないのに水につけただけで大量出現してくるんだけど、これ、食べれるの? 無理だよね? 何のために育ててたんだっけ? やべぇ、止まらない。誰か助けてっ!?
と、いう感じに∞増殖始めました。
九月ということもあり、殆どの野菜類が実を付け終わり、朝顔が咲き乱れ、紫蘇が穂を付け始める。
今年は蔓性の植物が多かったせいだろう、庭は踏み場もないほどに蔓だらけとなっていた。
トマトの添え物として立てた棒たちにも朝顔やら長芋やらが絡みついてなんかもうもっさり、別の植物にしか見えない状態になっていた。
10月。本日ついにサトウキビを回収して見た。
一つ剥いて噛みしめてみれば、口の中が砂糖食べた後のような感じに。確かに砂糖出来てるわ。
サトウキビ万歳。で、どうしよう?
大量に伐採されたサトウキビを見て途方に暮れるのだった。
メロンだろうか? かぼちゃだろうか? 何かよくわからないウリ科植物がしぶとく生き残っており花を咲かせていた。
雌株もできてたので上手くいけば冬頃に実が出来るかもしれない。……ダメじゃん。無理じゃん。
あ、もしかしたらこれ、冬瓜かな? それならありうるか。
正直、青虫に食われていた方が良かったかもしれない。
そう思ったのは明日葉だ。
何故そう思ったかって? 花が咲いてしばらく、庭に出てみれば恐ろしい現象がそこにあったんだ。
何があったかって、花一面にね、居たんだ。
青銀に輝くハエの群れが。
そう、蝶や適当な虫ならまだ良かった。カメムシや青虫、蜂だとしてもまぁ、許そう。
満開に咲く明日葉に群がっていたのは、ハエの群れだった。それはもうどっから寄って来た? と驚くほどに大量に。
見付けた瞬間何の虫だ? と思わず目を細めて見入って、ぶぅんぶぅんと飛び回る無数のソレを認識した瞬間悲鳴を上げて後ずさったのはいい思い出である。
恐ろしいぜ明日葉。なんか臭いにおいでてたんだろうな。最悪である。
おもわずキンチョール様を吹きまくっちまったぜ。
明日葉育てる時は花が付く前に引っこ抜いた方がいいかもしれないな。
とりあえずそろそろ寒くなってきたし、フェイジョアとフィンガーライムは家に仕舞っとこうかな。
翌日、サトウキビの外側を包丁でそぎ落とし、内部をみじん切り。これだけで二時間程を費やした。
砂糖を作るのだ。いや、黒砂糖か? まぁどっちでもいい。とりあえず砂糖を作るのだ。
みじん切りにしたサトウキビの中身をミキサーにブチ込む。
この時、中身が赤くなったサトウキビは使ってはいけないらしい。
何でも赤くなったサトウキビ喰うと腹下し、場合によっては死ぬらしいので。
ミキサーを稼働。
ギュインと刃の近くのサトウキビを粉砕するも、上に乗ったサトウキビの固まりたちはそのままだ。
菜箸使って上下を入れ替えながらさらにぎゅいんぎゅいんと粉砕していく。
水気が無いせいか滅茶苦茶動かない。
しまいにゃミキサーの刃が空回りしだすしまつ。
結局奥の方からほじくり返した微塵となったサトウキビを布巾に包んで絞り器に入れて力一杯押し込む。
腱鞘炎の腕が悲鳴を上げた。
痛い、痛い。極限の状態で必死に押し込む。
かなり少ないが何度か繰り返してしぼり汁をフライパンに。
父の見ている傍でフライパンを加熱。
フライ返しっていうのかね? あのお好み焼きとかひっくり返す奴。あれのシリコン製のを使って混ぜながら加熱。
水気がなくなりぼっこぼっこしてきたのでもういいかなぁ? と小声で告げる。
父は言った。水分まだあるからまだだろ。
え? もうちょっと?
そして、茶色くなっていたボコボコ泡は黒くなった。
焦げ臭ぇ!?
慌てて火を止める。
熱が無くなった砂糖もどきは固まり始めた。黒く、それはもう黒く光り輝いて……
そして出来あがったのは、黒くつややかな水飴。
ほろ苦く、黒糖の味がかすかにする焦げた水飴であった――――
だから………………捨てた。
……
…………
………………
そして、カメムシたちの季節がやってくる。
我が家が白い壁のせいで無数にひっつくカメムシたち。
家の前では30以上のカメムシたちがしゃかしゃかと動き、窓の外ではぶうぅんぶうぅんとカメムシたちが空を乱舞する。
庭ではこれまた30を越えるハエの群れが明日葉に群がり、家の中に入ってきたカメムシは蛍光灯の周りを5分程旋回しては急にぽとっとテーブルの上に落下する。
食事をしている時に出た時は最悪だった。
当然、即座に食事は撤収。
別の部屋で安全を確保するのだ。
移動を終えたその直後、お茶のあっただろう場所にポトリと落下した奴はその後めでたく? 水葬の刑となった。
もう少し移動が遅れていれば湯のみはもはや使いモノにならなくなっていただろう。
今年もハウスデフェンスの季節がやって来たのだ。奴らが侵入を行う限り、我々は負けることを許されないのである。やらせはせん、やらせはせんぞーっ。
そして、とある日。
本屋に寄ってさぁ次に行こう、と車のハンドルを握った時だった。
ハンドルの裏に隠れていたカメムシ君をぐにゅっと掴む。
溢れる謎の液体。迸る素敵な臭い。
せいしんてきななにかがぽきっとおれました、まる




