2017年・春
それは、実家に帰った頃から始まった。
庭があまりにも雑草だらけだったので、何か植えよう。その程度の事だった。
当時はエンドウ豆かミニトマトくらいしか育てられてなかったのだが、どうせならいろいろ育ててみよう。そんな思いから、始まってしまったのだ。
当時は失敗の連続だった。
珍しいという理由で植えたメキャベツ、ミント、青紫蘇。ついでに祖母が朝顔の色違いを幾つか植えた。
最初は、楽しかったのだ。普通に育つミント。青紫蘇畑。これはいい。そう、思っていたんだ。
メキャベツは日の光を受けて反り返り、自重に耐えきれず今にも折れそうな、まさに死を見つめし四足獣の牙のよう。
根を張ったミントは生い茂り、他の雑草を駆逐し始め、青紫蘇はひたすらに生い茂る。
使用道の少ないミントをちぎっては投げちぎっては投げ、根っこを掘り返し地面がひっくり返り、私は自ら彼らを駆逐する事になるなど、埋めた時には思いもしなかった。そして青紫蘇が花開く。後で知ったが花開く前の青紫蘇の穂先は油で上げると美味いらしい。実際美味かった。
そして、真っ白に染まるメキャベツ。
アブラムシ様がびっしりと……ぎゃああああああああああああああああ!?
失敗を糧に次に手を出したのは瓢箪、まくわ瓜、アシタバ、アイスプラント。
瓢箪の葉が生い茂り、まくわの葉が生い茂り家のガラス戸にはまさに緑のカーテン。
カメムシが卵を産みつけ大量発生。
そして永きに渡る奴等との戦争へと突入した。
アイスプラントは三カ月程元気に育ち、九月ごろに葉付きが悪くなりやせ細り消えて行った。 アシタバは二年保った。そしてその結末は……いや、ここでは語るまい。
そして全てが消えた中、ただ二種咲き誇る青紫蘇と朝顔(白色)。
次の年は失敗も踏まえ瓜系からチョイスしたのは大魔王スイカ。さらにネットで調べて隣には赤トウガラシのタカノツメ。レッドオクラにテングナス、メロンも植えた。
大魔王スイカは緑のカーテンと化し立派なスイカに。おそらく唯一の成功例だろう。同時に成ったはずのメロンは中身が真っ白だったり、割れて虫の餌になった。
当然ながら、これらの葉の裏でカメムシたちは愛を育み合った。
死ねやぁカメムシどもぉぉぉっ!!
レッドオクラは植えた次の日辺りから腐りだし根元から先に消えた。悔しかったので無事な茎を土に刺してみた。結局腐って散った。
鷹の爪は見事に成った。その横には沢山の青紫蘇が成っていた。ちなみに初年度以降青紫蘇は一度も植えてない。庭に散らばった種からの自然開花だ。ミントが意味不明な場所から再出してたので根こそぎひっこ抜いた。
テングナス。天狗の鼻のようにぴょこって出るって言ってたんだ。確かに一つ目は鼻あった。でも、なんで二つ目から普通のナスしかできないの?
この頃からドラゴンフルーツを室内で育成。数年を経て窓辺におけない大きさと成ったためベランダにてビニールハウスで冬を越す。
そして2017年1月。三年物のドラゴンフルーツが……逝った。
今年も最後まで生き残ったのは青紫蘇と、朝顔(白色)だけだった。……あとイチゴ。
去年育ててたエゴマはとてつもなく成長し、十月程に花咲いた。祖母からは花なんかつきゃせんと8月9月と言われていただけにこれは嬉しかった。だが、自重で倒れたエゴマは風が吹く度に家を叩いて謎の音が。恐かった。
2017年5月。新たな植物達の慈悲なき戦争がまた、幕を開ける……
というわけで、4月後期、庭を整えるために家から出る。
手にしているのは小型の鍬と鋤が合わさったような道具と農業用の鍬。ついでに指先と掌側がゴムでできた手袋。
斑に生えた草はまさに戦場を終えた関ヶ原。ツワモノ共の死に際がそのまま残されていた。
そこにはもう、ミントは居ない。全ての根を暴きだし駆逐した。あの繁殖力は脅威だ。もしかしたらまだどこかでひっそりと生まれているかもしれない。
だが、今回、ミントでも、朝顔でも、青紫蘇でも無い存在が庭を席巻していた。
イチゴだ。
数年前から少しづつ増えていたイチゴは、荒れ放題の土に増殖し、見事に花を咲かせていた。
硬い土の上にも根を生やし、雄々しく咲き乱れていたのである。
とりあえずこのままだとどうにもならないので掘り返す。
土を整え、車が一台入れる程の庭に、右端に縦に一列。左は横に三列、後日もう一列畝を作成。
さらに空いたスペースの一部を掘り返す。昨年エゴマを植えた場所だ。囲って二つぐらいの植物を植えられるようにする。
さらに空いたスペースにはまだ生き残っていた黄色イチゴをプランターから取り出し埋める。こいつは普通のイチゴと違って蔓が伸びずその場で生まれては死んでいくを繰り返す生態なのでプランターではすでに一杯一杯だったのだ。
そして左奥の一列に邪魔だったので引っこ抜いていたイチゴたちを挿入。
ついでにプランター達の片隅で硬い土に生まれていた黄色人参を発見したので引っこ抜き二列めのイチゴの列に混ぜ込む。堅い岩盤で生まれたせいか人参になれずただの根っこみたいになっていたが、きっと生えてくれると信じている。
三列目には再チャレンジの意味でアシタバを。順番に、無難に買ったナスとトマトを植えてみる。
右の列は緑のカーテンを作るため蔓性植物を植える。本日はレモン味のメロンが成ると言われるレモーネの種を直埋め。後日、プランターで育成して葉っぱが出来てから埋めるモノだと知る。
去年のエンドウ豆が一匹生き残っている様子だったのでそこだけ放置してメロンを植え、その横には数年前に植えて去年からようやく顔をだした紫アスパラ。実に四年目の出現だった。二年で出てくるってのは嘘だったらしい。
今年もひょこっと顔を出していた。もちろんヒャッハーしながら刈った。
アスパラの横は空いていたので逝ったドラゴンフルーツを転がしておく。もしかしたら、まだ復活するかもしれない。淡い期待を抱いて土に埋めてやる。根っこ腐ってたけど入れてやる。元気に育て。
その横では父が埋めた百合根だろうか? 既に何本か出現し始めている。
昨年エゴマを育てていた場所にはミニトマトを植えた。今年は堅実にやるつもりだ。
ミニトマトの近くには前にプランターで育てて分家したヤグラネギ。
ネギ坊主に成らず、ネギの上にネギが生まれるという謎の生態のネギだ。新しいネギがうにゃぁっと生えている様はもはやキモイ。今は既に新しきネギが穂先に出来ている。
数日後、四つ目の畝を左側に作成し、家に余っていた種を幾つか蒔く。
蒔いたのはレモンハーブ、綿、黒ゴマ、黄色人参。
ついでに育てやすいらしいメロンを見付けたので買ってきて、レモーネメロンの種を掘り起こして四つ目の畝の右端に投擲。開いた場所にころたま? とかいうメロンの苗を優しく植える。
ちなみに、長年の経験からウチの庭、スイカは育つがメロンは育ちにくいらしいことを学んだ。
元気に育てメロンたち。
追伸、通販で変な草を見付けたのでプランターで育てることにした。荒野に咲く草らしくて細い草がうねうねっと伸びるらしい。名前は外国語だったので読めない。ふれーぜるしっつぇる? ふりーぜるしぜる?? なんかそんな草である。
他にもプランターではサンカヨウや、枯れにくいため幸運になると言われている草を育て中。
なぜか幸運になるらしいその草は今黄色く染まり枯れようとしているのですが、あの、作者の運は大丈夫なのですか?




