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可能性のお話 クリスマス

クリスマスだし、書きたかったんです

でも本編じゃクリスマスまで行ってませんし……

ということであり得るかもしれない未来のお話です

「ふぁ、っくしゅっ……ずび」


 職場からの帰り道。ふいにむずむずとした感覚にくしゃみが出る。

 寒さに鼻が鳴り張らないカイロを手とともに詰め込んだ手袋を頬に当て暖を取る。

 ほんわかとした温もりに目を細めた。


「寒いなぁ……」


 十二月の半ばを超えた今、当然のことながら空気は冷え切っている。さらに空もどんより曇っているため月明かりもなく余計に寒さを感じてしまっていた。


 思わず寒い寒いとつぶやいてしまうのも仕方ないだろう。


 住宅街を一人歩き目的地にたどり着く。

 ある程度手入れのされている前庭を通り古びた扉に鍵を刺す。


 引き戸を膝で軽く押し僅かに持ち上げながら指せばすんなり奥まで差し込まれる。

 無駄に高等なテクニックが必要になるがもはや将太にとっては日常で行う動作の一つ。難なく鍵を開けガラガラと扉を音をたてながら開ける。


 玄関くぐって右手側から暖かさを感じる光が扉の隙間から漏れていた。

 テレビ番組の音とともに楽しそうな談笑も聞こえてくる。

 居間に続く扉を開ければソファーでテレビを見ていた男子二人とテーブル席で話していた女子二人が振り返る。


「あ、先生おかえりー」

「おかえりなさい」

「兄ちゃんおかえり!」

「先生おかえり」

「ただいま」


 四人の生徒に迎えられた将太は纏っていた防寒着を脱ぎつつ答えた。


「雄太―。お前騒いで浅野先生に怒られたんだって?」

「げっ、なんで兄ちゃん知ってんの」

「職員室で席が近いからなぁ。浅野先生も雄太が弟だって知ってるし。騒ぐのもほどほどにしなよ?」

「うぇーい」


 雄太はまだ将太が施設にいたころの最年少の弟だ。今ではすっかり大きくなって適度にやんちゃすることもしばしば。雄太が何かやらかすたびにほかの先生から話を聞くのだ。


 ほかの三人もその話を知っていたのか。将太の話を皮切りに雄太を揶揄い始める。

 その楽しそうな様子に将太は和み頬を緩めた。


 冷えた体を温めようと暖房で暖を取っていると女子の一人、佐々ささき彩芽あやめが弾むように寄ってくる。


「そういや先生ケーキありがとうね! すっごく美味しかった!」

「あっ、そうだった。高橋先生ケーキありがとうございました。とても美味しかったです」

「そっか。喜んでもらえたみたいで作った甲斐があったよ」

「あ、やっぱりあれ先生の手作りだったんだ」

「お店のケーキみたいでした」


 今日の日付は十二月二十五日。クリスマスだ。このイベントごとに生徒が喜ぶだろうとこっそり作ったケーキを仕込んでおいたのだ。

 結構な自信作であり生徒たちの様子から本当によくできていたのだろう。

 真っ直ぐな称賛に将太は僅かに照れ頬を掻く。


「いやぁ、やっぱり兄ちゃん女子力高いよな。佐々木や園田も見習えよ」

「太田うるさい!」

「私たちの女子力が低いのではなく高橋先生の女子力が高すぎるのです」


 雄太の余計な言葉に年頃の女子である彩芽ともう一人の女子、園田そのだ裕子ゆうこは雄太をねめつける。


 その眼力が強かったからか雄太は「ひぇっ」と悲鳴を上げて傍にいた男子、早苗さなえ彩輝あやきの影に逃げる。


「雄太はいつも余計なこと言うからそうなるんだよ。ちょっとは学習したらどう?」


 呆れたように彩輝が雄太に言えば雄太は自覚があるのかそっぽを向いて吹けない口笛を吹いて誤魔化す。


「先生今日は早めに帰るんだよね」

「あぁ」

「早く帰って奥さん構ってあげなきゃ!」

「勿論。めいっぱい愛でるつもりだよ」

「きゃー!」


 今日はクリスマス。

 将太が愛妻家(・・・)であることはこの四人もよく知っている。

 何せ将太が日ごろからナチュラルに惚気るため聞く気がなくても聞かされてしまうのだから。


「それじゃ。騒いで夜遅くまで起きてるなよ?」

「はーい」

「高橋先生、おやすみなさい」

「ばいばい兄ちゃん!」

「先生、お休み」


 生徒四人に別れを告げ木舟荘を去って妻と暮らすアパートへ。

 その足取りは僅かに早く将太の気持ちが溢れている様だった。


「ただいま」


 妻と暮らすアパートは古びた木舟荘とは違って現代風のものだ。しっかりと暖房器具も備えられて隙間風が吹くこともない。だがやっぱり青春時代を過ごしたあの古びた建物が恋しくなってしまう。


 部屋の中に帰ったことを告げればパタパタと足音が聞こえリビングに続く扉が開く。

 姿を見せるのは当然、将太の最愛の妻である。


「おかえりなさい。寒かったでしょう? 温かい飲み物用意してますよ」


 最愛の妻はその美貌を彩るように愛情のこもった笑みを浮かべる。

 将太も思わず頬が緩む。

 あふれ出る愛情が自然と表情を変えてしまう。


「あぁ、かなり寒かったなぁ。だから飲み物より君に温めてほしいな」

「え、しょ、将太さん!?」


 スッと近づき抱き寄せる。部屋の中で暖房に当たっていたからか、彼女の身体は暖かく、ぽかぽかしていた。


「ひゃっ! つ、冷たいですっ」

「ふふ、ごめん。つい意地悪したくなった」


 冷え切った手を彼女のすべすべの頬に触れさせれば顔をのけぞらして逃げてしまう。その先には将太の顔があって急な接近に彼女の頬が桜色に染まる。


「……もう結婚して何年も経つのにまだ恥ずかしいのか?」

「うぅ、だって……」


 だっての続きが出てこない彼女は視線を彷徨わせた後ふいに将太の唇に自らの唇を軽く触れさせた。


 何やらしてやったりと言いたげな表情で将太を見上げている。

 どうやら言い訳が思いつかなかったから将太を恥ずかしがらせて同じ場所に引きずり落そうとしたようだ。だが、


「んっ!?」

「……お返し」


 将太は照れを表情に浮かべさせることなく二度目のキスをする。


 思惑が失敗に終わり、さらに又もふいを撃たれた彼女の頬がさらに染まる。


「さ、ここは寒いから中に入ろう。続きはそこで」

「あっ、ちょっと待ってくださいっ! おろしてぇ!」


 彼女を横抱きに将太はリビングへ。

 小柄な彼女では抵抗も意味をなさずあっさりと連れていかれてしまう。


 彼女を横抱きのままカーテンの開いた窓に目を向ければ空から白い結晶が舞ってきていた。


「あ……、雪、綺麗ですね」

「あぁ、ホワイトクリスマスだな」


 愛する妻と二人。舞い散る雪に思いを馳せる。


「愛してるよ、凪沙」


 ふと零れた言葉に妻、凪沙ははにかんだ。


「はい、私もです!」

2020.12.27

誤字報告ありがとうございます

とても助かりました

誤字がないようにとは気を付けていましたが想像以上に抜けてましたね笑

今後とも「残念な美少女との暮らし方」をよろしくお願いします

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