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安らぎの夜

間が開いた代わりにストック出し切っちゃった

三話連投の三話目です

「やっぱりホラー苦手だったんですね」

「……前までは見れてたんだけどなぁ」

「確か、弟さんたちとよく見ていたんですよね?」

「あぁ、ホラー好きでよく付き合わされてたんだけど……、あぁ」


 昔の光景を想起していた将太は何かに気づいたように声をもらす。


 施設にいたころ、ホラーを見る際はいつも弟妹達に囲まれていたのを思い出したのだ。

 ホラーが苦手だというのに将太と一緒にいたいという小さな弟を腕の中に抱きしめ、怯える妹と盛り上がる弟に挟まれて。


 後ろでは幸子がそんな兄弟のことを微笑ましそうに眺めていた。


 ホラーという冷たさを感じさせるものを見ているというのに温かい場所だった。

 それにホラー映画を見終わったというのに怖がる弟妹達に引っ付かれて独りになる時間なんてなく、怖がる暇もなかったほどだ。


 だからホラーに対して苦手意識を持っていなかった。

 今回それが露見し、自覚したまで。


 今この状況に至ってしまっているのも仕方のないことなのだ。


「……そろそろ落ち着きましたか?」

「……ごめん。もう少し」


 ダイニングテーブルで対面に座り凪沙の手を握りしめたまま。

 凪沙がコンビニから帰ってきてずっとこの状態だ。


 触れる手から凪沙の存在を確かめているようにぎゅっと。


「ふぅ……。落ち着いた」

「それはよかったです」


 先ほどまでの緊張状態から力が抜けぐてっと椅子に深く腰掛けた。

 シンとした静寂に包まれそうになるとまたホラー映画の内容が浮かび上がりそうになって慌てて会話を続ける。


「まさかホラーがここまで怖かったなんてなぁ」

「見てるときはそうでもなさそうだったんですが、すごい怖がり様でしたね」

「ホラー見るときは常に誰かがそばにいたからさ。怖がる暇もなかったんだと思う」


 それに自分より怖がっている人を見ると恐怖心も紛れるというもの。


 凪沙に情けないところを見せてしまったなぁ、と将太は恥ずかし気に頬を掻く。


「今日は居間で寝るよ。ちょっと自分の部屋で寝るのは怖い」

「大丈夫ですか? なんでしたら私もここで寝ますけど……」


 この現状に至った原因であることを自覚している凪沙がそう提案する。


「いいのか? 正直かなり助かるけど……」

「はいっ。こうなった原因でもありますし、なんだか高橋さんが頼ってくださってるみたいで私も嬉しいですし」


 大抵のことは一人で熟してしまう将太だからこそ凪沙に頼るということが少なく、ちょっとしたことでも将太に頼られているということが凪沙を喜ばす。


 そしてこういったことに疎く、頼られたことによる喜びと相手が信頼している将太だからということもあって全く気付いていないが、同年代の異性と同じ部屋で寝ることになるという事態に違和感や抵抗を抱いていない。


 将太も将太でそういったことを気にする質でもないうえに恐怖によってそれどころじゃないこともあって就寝の準備は着々と整えられていった。


 凪沙はソファーで、将太は床に敷布団を敷いて横になる。

 凪沙と共にいるとはいえまだ暗闇に恐怖を感じてしまうからと常夜灯だけはつけられた暖色に照らされる居間で。

 恐怖を紛らわせるためにと他愛のない会話を続けた二人はいつの間にか意識を落とし穏やかな寝息が聞こえてくる。


 何とも言えないこの距離感。朱里が見れば眉を吊り上げ将太を締め上げてしまうこと間違いない。

 というか後にこの出来事をぽろっと凪沙がこぼしてしまい、実際に締め上げられることになることをこの時の将太はまだ知らない。


 只今は恐怖の中傍に小さな安らぎを感じつつ穏やかに体を休めるのだった。

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