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恐怖の始まり

ちょっと間が開いてしまいすみません

リアルが大分忙しくなってきたので更新速度遅れるかもしれません……

三話連投一話目です

「高橋さん」

「……おう」

「映画見ましょう!」

「映画?」


 寄せていた眉を緩めキラキラと目を輝かせた凪沙があるものを手にもって将太の隣に腰を下ろす。

 そして手に持っていたもの、レンタルDVDを将太に突き出した。


 表紙はおどろおどろしくホラージャンルだと見て取れる。


「ホラー?」

「はいっ。今日朱里さんたちとレンタルショップに行ってきたんです。そしたら前から気になってた映画がレンタル可能になってたので……。一緒に見ませんか!?」


 いつもよりやや興奮した様子でホラーが好きなのは明らかだ。

 だから将太はその誘いを断ることはない。


「そうだなぁ。久々だしそういうのもいいね」


 それが将太にとって最恐の一夜の始まりになるとも知らずに……。


「いやぁ! すごく面白かったですね!」

「あ、あぁ。そうだなぁ。最近の演出はすごいんだなぁ」


 バクバクと鼓動し続ける心臓のあたりを服の上から握りしめた将太は滝のように流れる冷や汗に困惑していた。


「クライマックスなんてもうハラハラして叫びそうでした! って、どうかしましたか?」


 そんな将太の様子に違和感を持った凪沙が心配そうに将太の顔を覗き込む。


「い、いや。なんだろうな……」

「……もしかしてホラー苦手でしたか?」

「ホラーはよく弟に付き合って見てたから苦手ってわけじゃないと思うんだけど」

「そうですか?」

「ちょっと汗かいたから流してくる」


 すでに風呂に入っていた将太だが、冷や汗でこのまま寝るのは気持ちが悪い。

 だから凪沙に告げて今の奥の風呂場へと向かった。


 木船荘の風呂場は居間にある台所の横の扉を通って更に奥にある。


 ギギィ……、と鳴く引き戸の音がやけに響く。

 いつもはここまで気にするものではないというのに。


 扉が閉めれば薄暗く短い廊下だ。右手に便所の押戸。正面に脱衣所の引き戸がある。

 戸を引き、びくりと体を硬直させた。


「っ、ふぅ……」


 正面にいたのは、見たのは洗面台の鏡に映る自分だ。廊下の闇を背後に映しているため一瞬自分と分からず驚いてしまった。

 力を抜き深く深呼吸をする。


 何を過敏になっているのだろう。


 ホラー映画を見たばかりだから恐怖を連想させるものに反応してしまっているのだろうか。


「今まではこんなことなかったんだけどなぁ」


 さっと服を脱いで風呂場へ。

 所々に大理石が使われた意外と豪華な風呂だ。

 ただ全体的に古くやはり薄暗い。


 風呂椅子に座ってシャワーを被る。しかしなぜか背後が気になって仕方がない。

 振り向くのが怖い。鏡に映る光景を見るのが怖い。周りに誰もいない、独りでいるのが今どうしても怖かった。


「ッッ!!」


 烏の行水の如く雑に汗を流した将太は足早に凪沙がいるであろう居間にもどる。

 が、


「あ、朝倉……?」


 いない。

 明かりが消されていて誰の気配もしない。

 名前を呼んでも返事もない。


「あぁ、部屋だな。へ、部屋に戻ってるんだろう」


 部屋があるのは玄関を挟んだ反対側。

 造りの古い木船荘はどうしても全体的に薄暗いためどこかホラー映画の舞台のよう。


「朝倉~……」


 若干情けなさの感じる震え声で名前を呼ぶがやはり返事はない。


「ゴクッ……」


 息をのみ見据えるのは明かりの付いてない居住区だ。

 行きたくはない。行きたくはないが今独りでいるのは心細く、何より返事のない凪沙のことが心配だった。


 もしかすると転んで頭を打ってるのかもしれない。何か急病で気を失っているのかもしれない。


 だから将太は明るい居間から一歩足を踏み出した。

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