二人の友達
東雲高校に入学してから三週間目。四月も終わりという土曜日の日。
木船荘のことについての報告等で土曜日は学校に来て東雲理事長に面会するようになった。
今日はその日で今ちょうど終わって帰るところだった。
しかし理事長室から正門へと向けて歩いていると強い視線を感じて足を止める。
「おぉう……」
そっと振り返れば校舎の壁から除くように三つの頭が並んでいた。その光景は一種のホラーのようで思わずなんともいえぬ声を出してしまう将太。
壁からはみ出した三つの頭部は将太に気づかれたことに気づきバッと飛び出してくる。
女子にしては高い身長の小麦色によく焼けた肌の短髪少女とセミロングのどこかぼーっとした雰囲気の少女だ。
最後の一人は将太の良く見知った顔、凪沙だ。
「どうかしたのか?」
「えぇーっと」
将太が問えば凪沙が目線を逸らし口ごもる。
「……話の流れで私が木船荘に住んでると話したら二人が興味をしめして、あ、この二人は私の友達の椎名さんと湯田さんです。以前話した二人です」
「あぁ、同じ陸上部の」
「はい」
凪沙に紹介された二人はそれぞれ前に出て将太の前に立つ。
「あたしは椎名朱里よ。よろしく高橋君?」
「湯田由紀。よろしく高橋」
二人は挨拶をしつつもどこか値踏みするような視線で将太を眺める。
じろじろと。つま先から頭のてっぺんまで。くるくると周囲を回りつつ。
突然の意味不明な二人の行動に将太もつい引き気味だ。
「あー、なに? 俺なにかしたかな?」
「いえ、高橋さんがどうとかではなくて……」
「あんた。凪沙と同棲してるんだって?」
「同棲?」
凪沙が困った顔をして事情を説明しようとするが明かりがそれを遮った。
しかもその口から飛び出した言葉に将太は首をかしげてしまう。
「二人で木船荘に住んでるって。凪沙が言ってた」
「どこに住んでるのかと聞かれまして……」
「木船荘に住んでいるってのはまだいいのよ。噂では大分酷いみたいだけど住めば都ともいうし。噂ほどではないって可能性もあるし。ただ! 聞けば木船荘に住んでるのが凪沙と性欲旺盛な男子高校生であるあなただけっていうじゃないの」
じとーっとした目が将太を貫く。
「あなた……凪沙相手に厭らしいこと考えてるんじゃないの?」
「厭らしいって……。俺たちはそんな関係じゃないから」
「口ではそう言ってるみたいだけど本当のところはわからないわ。男なんてみんな狼じゃない」
由紀は心配というより興味という意味合いで将太の観察をしてるが朱里の場合は少し違った。
朱里が将太に向けているのは興味ではなく敵意。
どうしてそこまで敵意を向けられるのかはわからないが朱里が凪沙のことを心の底から心配しているからこそだということは理解できた。
だから将太は微笑ましいものを見るように凪沙に目を向けた。
「いい友達ができたな」
「はいっ、二人ともとてもよくしてくれるんです」
凪沙も嬉しそうに眦を下げている。
「なに、この二人」
二人ののほほんとした空気に朱里も毒気を抜かれたように溜息を吐いた。
朱里のそばでは由紀がボーとしながらその様子を眺めている。
「なんかすごく自然」
二人で並んでいる様子がまるで当たり前であるかのように様になっていた。
朱里と由紀は入学してからすぐに凪沙と親しくなって、だからこそよく分かった。
将太の前での凪沙の様子が普段より柔らかいことに。
それは凪沙が将太に信用を寄せていることの証左。この様子を見れば少なくとも朱里が心配しているようなことにはならないというのもわかる。
だけど、
「……やっぱり駄目よ」




