お寝ぼけさん
「ふぁっ!?!?」
将太が机に頬杖ついて窓から差し込む温かい春の陽気にのんびりしていると凪沙がビクンと震えて目ジャーキングによって覚醒する。
「おはよう」
今度はしっかり目が覚めているようなので改めて挨拶する将太。
「お、おはっ、おはよう、ございます……?」
将太に挨拶を返しながら凪沙は首を傾げた。
「なぜリビングにいるのでしょう?」
「やっぱ寝ぼけてたか。朝倉が自分で降りてきたんだよ」
「…………記憶にございません」
どこかの政治家のようなことを言いながら凪沙は頭に触れて気づく。
いつもは苦戦する寝癖が全くなくて、むしろいつもより綺麗に整えられていることに。
「これも自分で?」
「それは俺」
寝ぼけた自分のまさかの一面に驚いた様子の凪沙に苦笑し、用意していた濡れタオルを渡す。今度は冷たい水を使っている為より目が覚めるだろう。
しかし凪沙は差し出された濡れタオルにまたも首をかしげる。
「……タオル?」
差し出された意味を理解していない様だ。
「涎」
確かに髪は綺麗に整えられ二度寝しても乱れることはなかったが、口端からはしっかりと涎が垂れていた。
まだ完全に目が覚めていないのだろう。動かない凪沙に将太は濡れタオルを宛がい少し乱雑に顔を拭う。
「うぐぐぐぐっ」
「ほら、綺麗になった」
「あ、ありがとうございます」
ようやく濡れタオルを差し出された意味に気づいた凪沙は顔を赤らめ礼を言う。
ソファーで背筋を伸ばして座る凪沙は立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花という言葉が示す通りの美少女だ。先ほどまでの残念な姿の欠片もない。
しかしあの姿は凪沙が気を許しているからということで、木船荘が彼女にとって気を緩めることができる空間であると思っていることの証拠でもある。
だから将太もつい甘やかしてしまうのだ。
「さてと」
凪沙が目覚めたので将太は立ち上がり出かける準備を始める。
「どこかに行くのですか?」
「今日はすごく天気がいいからさ。ちょっと近くを散策がてら散歩してくる」
「散歩ですか、いいですね。私もついていってもいいですか?」
「あぁ」
凪沙も準備を始める。といってもただ近所を歩くだけ。モノの数分で支度を終えて玄関に集まった。
「わっ、これどうしたんですか?」
そういって凪沙が指したのは木船荘の前庭だ。
将太の手によって少しずつ綺麗になっていっていたはずの前庭はなぜか草によってぐちゃぐちゃになっていた。
「抜いた草を干してるんだ。こうすると後々袋に詰めるときに詰めやすくなるんだ」
「…………高橋さん。おばあちゃんの知恵袋みたいですね」




