携帯買った!
入学してから初めての休日。
土曜日の午後、将太と凪沙は街へ繰り出していた。
「態々付き合ってくれて助かる。俺一人じゃよく分からないからなぁ」
「いえいえ、いいんですよ。いつもご飯とかお世話になってますので、えぇ、本当に……」
若干の自嘲が零れている凪沙だが気を取り直して笑みを浮かべる。
今日は将太の携帯、スマートフォンを買うために買い物に来ていた。
当然のことながら将太は未成年であるためすでに保護者である幸子から親権者同意書は郵送してもらっていて準備は万端。あとはお店に行って新規契約を結ぶだけなのだが、ここで問題が一つあった。
それは将太が機械等に疎いことだ。
「なんか沢山種類はあるはぎが?が何とかとか。さっぱりなんだよなぁ」
今までスマートフォンなんて扱ったことのない将太。たまに兄弟が使っているのを見たり一緒にゲームをしようとせがまれたりしたときに軽く触れた程度だ。
「高橋さんは希望の機種とかあるんですか?」
「いや、正直機種とかもよく分からないからその辺も朝倉に教えてもらえたらなぁって」
「任せてください。流石の私もスマホの扱いには慣れているので高橋さんにも十分教えてあげることができると思いますよ」
「それは心強いな」
町の中心部にある某携帯会社に着いた二人は早速中へ入る。
店内は白を基調として清潔感を保たれていて迎える店員たちも皆ぴしりと身だしなみが整えられていた。
ついつい将太たちの背筋も伸びでしまう。
「いらっしゃいませ。本日はどのようなご用件でしょうか?」
「スマフォを買いたいんですけど」
「新規のご契約ですね。それではどうぞこちらの席へ」
案内された席に二人並んで座る。
対面に座った店員はパソコン等を操作しながら話しかけてくる。
「まずはどの機種がいいとかはすでに決められていますか?」
「いえ、正直どの機種がいいのかわからなくて」
「そうですねぇ。機種によっては性能も耐性も様々ですので。お客様のご年齢でしたらマイフォンやスペース等が人気になりますね」
「へぇ。あ、朝倉は何を使ってるんだ?」
「私はマイフォンンxiですね」
隣で静かに聞いていた凪沙に質問してから将太は少し考える。
「なら俺も同じのにしよう。そうすればわからないときはすぐに聞けるしな」
「では機種はマイフォxiでよろしいですか?」
「あ、はい。それでお願いします」
機種決めは将太があっさりと決めることができた。あとはプランを組むだけだがこれが難航した。
プランによっては通話かけ放題や連携サービスの割引、インターネットの使用制限など多種多様に存在する。
できるだけ無駄なお金を使いたくない将太はしっかりと聞いて吟味するのだが、その途中途中で知らない単語が連発してくる。必死に説明についていこうと将太の脳内は常にフル回転だ。
凪沙に助けてもらったり店員にわかりやすいように言葉を崩してもらったりとすること一時間ほど。
「はい、こちらが商品とその他付属品になります」
「……ありがとうございます」
すっかり疲れ切った将太は這う這うの体で店を後にした。
隣では凪沙が苦笑を浮かべている。
「朝のランニングでは疲れない高橋さんがこんなにも疲労するなんて、相当苦手なんですね」
「……昔っからどうしてかこういった類のものは苦手でさ。弟にやらされたゲームとかでも一度も勝てたためしがない」
勝負以前に操作も覚束ず弟妹達に呆れた表情をさせてしまったほどだ。
しかしこれで将太もスマホデビューを果たしたのだ。
早速とばかりに健司たち三人にあらかじめもらっていた連絡先を登録しようとする。
が、
「…………………………………………あれ、なんか凄い自分の顔撮ってる」
「何してるんですか……?」
パシャシャシャシャシャと連続してなるシャッター音に凪沙に呆れた視線が向けられる。
将太が一端にスマホを扱えるようになる時はまだまだ先のようだった。




