閑話
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萌が雅也と出かける一日前、金曜日。
「萌ー!テストも終わったし、明日四人で遊ばない? 確かバイトないって言ってたよね?」
元気よく星華が萌を誘う。
潤と春希も期待顔だ。
萌が雅也に相談したあの日、マスターは萌の不調を心配し、今週いっぱいもバイトを休みにしてくれたのだ。
「ごめん、明日は予定があって」
申し訳なさそうに断る萌。
だが、雅也と出かけるのが楽しみなのか、ほんわかした雰囲気を醸し出し、瞳が輝いている。
「もしかして、彼氏とデート?」
にこにこ、というよりにやにやしながら星華が聞く。
それを聞いて潤は衝撃を受けたような顔をしているし、春希はそんな潤を見て笑いをこらえられない。
「えっ!? 彼氏なんていないよっ! 雅也……あっ、大橋さんと約束があって……」
顔を赤くしてワタワタと慌てる萌。
「なーんだ、彼氏じゃないのかー、残念!」
星華はそう言ったが、萌の恥ずかしそうな様子や真っ赤な顔を見て、恋の予感を感じた。
一方、潤も萌の様子にわずかな焦りを感じる。
「大橋さんとの予定って……打ち合わせ?」
「ううん、違う。買い物行くの。お世話になった人へのお礼を一緒に選んでもらおうと思って」
「そ、そっか……」
「楽しんでな! 俺らとはまた遊ぼうぜ!」
潤の肩をたたきながら、春希が明るくそう言った。
*~*~*~*~*~*~*~*~*~*
「ねえねえねえねえ! 萌超かわいかったんだけど! 顔赤くして照れちゃって。しかも雅也って言いかけてたよ!? 普段絶対名前呼びだよ!! 恋する乙女だよねっ!?」
萌が帰った後、星華が興奮してさけぶ。
「確かに可愛かった。めちゃくちゃ可愛かった。だが! 恋する顔ではない。萌は恋なんかしてない!」
普段の冷静さが嘘のようにむきになって主張する潤。
そんな潤に、春希も星華も爆笑だ。
「まあ、萌ちゃんが恋してるかどうかは分からないよな。ピュアだから恥ずかしかっただけかもだし」
笑いながらも春希はフォローする。
なんだかんだ言って、潤を応援してるのだ。
「でも萌が元気になってよかったよ。俺らが力になったわけじゃないのが悔しいけど……」
潤が少しの悔しさを覗かせながらも安心したように言う。
気持ちは三人とも同じだ。
自分たちが何もできなかったのは悔しいが、萌にまた明るさが戻ってほっとしているのだ。
頑張り屋で、優しくて、でもそれ故なんでも一人で抱え込んでしまう萌。
萌が困ったとき、真っ先に頼られる存在でありたいと願う潤と春希と星華。
どんなにつらい過去があっても、それに向き合い、ひたむきに努力する萌が、三人は大好きだ。
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