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Revolution(科学の力で日本を変革、そして宇宙へ)  作者: 黄昏人
第1章 超天才「順平」歴史への登場
12/52

加速する日本の変革3

まだまだいろんな変革がでてきます。

まもなく中国と戦争です。

 2月になって、順平はアメリカに発って行った。

 山戸に牧村及び斎藤も立ち会って、山戸の理事長室で話している。斎藤は、博士課程修了と共に論文が認められて博士号を与えられ、今技術開発公社での教授である牧村の助手として働いている。

 彼も様々な発明、開発に絡んで助手としては大変恵まれたロイヤリティの配布を受けている。彼は、かねてから恋仲だった1年後輩の新垣百合子と結婚したが、百合子はまだドクターコースのの3年である。


 山戸が学長選挙のことを言う。

「結局、学長は医学部の伊藤学部長にお願いすることになったよ。伊藤さんは、最近のがんの治療法で世界的になられたことだから、適任だ」


「医学部も、がんの治療法を確立して世界中からオファーが大変らしいですね。順平君もおばあさんをがんで亡くして、治療法にはだいぶこだわっていましたからね。相当、伊藤先生のところにも出入りしていましたね」

 そう牧村が言うと山戸がその話を受ける。

「うん、ガンは今や圧倒的に死因のトップだから、インパクトは大きいね。また、政府も伊藤さんの新薬および化学療法を、両方ともにあっという間に認可したね」


「あれだけ、効果がはっきりしていれば、認可しないはずはありませんよ。実は私の妻のお母さんもあの薬で救われたのですよ。」

 牧村が言うのに山戸が答える。

「うん、そうだったね。あれは、タイムリーだったよね。ちなみに、牧村君のネイチャーに載った論文は、結局事実に先を越されたような具合になったね」


 それに対して牧村が言う。

「ええ、まあ反対論者はずいぶんいましたが、これで反論の余地はなくなったわけですから、まあ、いいんじゃないですかね。結局アインシュタインの相対性理論は間違っているわけではなく、一面の真実ということでしたね。

 それより、山戸先生のご存知の、順平君が月軌道に行ったあと、さまざまな試験をした結果のデータですが、非常に面白い傾向が出ています。結局、時間も確固としたものでなく物理現象の一部で、やり方によっては操作も可能のようです」


「うーん、私もちょっとそれは感じていたのだけど、まさかと思っていたが。いずれせよ、まとめたら見せてほしい」

 山戸が応じるのに、牧村が公社のことに話を持って行く。

「ええ、わかりました。ところで公社もすごいことになっているようですね」


「うん、知ってのとおりFR機の設置のロイヤリティは、まだほとんど我が国の分のみだけだけど、それでも施設能力の増加が年間5千万㎾を超えそうだから、これに1000円/㎾ ですごいよ。また発電量当たりも国内だけで5000億㎾時に0.1円kW時だからね。まだ海外分はわずかだけど、最終的には国内の倍の単価で、量的には国内の10倍だから、将来はすごいことになる。

 また、江南大学発のロイヤリティ対象は1昨年、去年だけで70件あって、今年はFR機を除いてもロイヤルティの収入が700億を超えそうだ。やっぱりS型バッテリーとモーターが大きいがね。これをどう使うか、決めなきゃならんがいずれにせよ、技術開発に主に投資したいと思っている。

 とくに、すでに重力エンジンが実用できることが証明されたので、航空宇宙への投資をやろうと思っている。それでね、ここから40km山に入ったあたりに牧原山地があるだろう?」


 牧村が頷くのを見て、話を続ける。

「あそこは、大部分国有地なんだ。あそこに、宇宙船工場と、国際空港、航空宇宙基地、それから宇宙飛行士学校を作る。土地はもう買い集めさせている。もうすぐ、県知事とも会って話をするつもりだ。たぶん、1兆円くらいかかるが、公社だったら十分出せるからね。

 ちなみに、君も知っているだろうけど、江南大学の医学部、工学部、理学部は日本で最難関の大学になった。それもあって、学部と学科は公社を含めて思い切り拡充はしているのは君も知っての通りだ」


 さらに続けて山戸は言う。

「それから、重力エンジン関連のロイヤルティについては、順平君が新聞社の設立と、政党の立ち上げに使いたいということで、公社は直接関与していない。だけど、これも産業面ではすごいことになるね。航空機はすべて重力エンジン方式に代わるな。

 さらに、船舶については今後は海を航行する船はなくなるだろうね。たとえ10万トンの航空貨物機でも容易にでき、低いコストで運行できるようになるからね。しかも、速度については時速500kmくらいは容易に出せる。だから、運航のコストは航海、この場合は飛行か、それごとの要員の拘束時間が大幅に短くなるからかえって大幅に安くなるね。

 防衛省は順平君の協力で、既存の戦闘機と戦闘爆撃機の重力エンジンの換装をだいぶ進めているらしいよ」



 順平は、アメリカでの1.5カ月の訪問を終えて帰ってきた。半月延長した上での帰国である。

 日本でも最重要人物になっている彼には、アメリカまで2名の随員『ボディガード』がついて行った。日本にいるときは、彼のみのガードは交代要員を入れて8名でチームを作っており、少年相手ということもあって男女4名ずつである。

 アメリカでは、基本的なガードはアメリカ側が行うと請け合われたので、2人に絞られたのだ。安田亮一24歳、合気道3段の猛者と、もう一人はリーダー役の木山健二30歳、柔道3段であり、どちらも射撃術は上級である。

 アメリカでは、基本的には研究所を回って、開発発想セミナーを開くというもので、プライドの高いアメリカのエリート研究者の感情的な反発もあり、最初はなかなかうまく行かなった。しかし、融和的な人物が指導的な立場でグループに入った場合は、大きな成果が得られた。

 基本的に1日2回、週に5回実施して10回を過ぎるころ、成果が出ているのが知れ渡り、感情的な反発も薄れてきてセミナーも順調に行くようになっている。


 アメリカ側の随員に、ずいぶん若い娘が混じっている。ソフィア・カーター18歳で、飛び級でMITのドクターコースに所属する天才である。彼女の身長は155cmで、アメリカ人としては少し小柄であり、いま13歳で155cmの順平と同じである。


 ダークブラウンの髪と緑の瞳のすらっとした美人で、落ち着いたやわらかいしゃべり方をする感じのいい人だなと、最初会った順平は思った。ちなみに順平は英語には困らない。順平は、日本ではあまり女性との付き合いはない。


 あっても、10代の女性は日常の生活の中では接点がない。まだ、基本的にあまり女性自体に関心はなかった。一方で、健康な13歳の男の子らしく、性に関する関心は生まれつつあり、夢精も何度か経験している、もっとも、ソフィアが普通の18歳と同じかと言えば、疑問があるだろうが。


 日々、アメリカ中の旅をして、毎日セミナーを開いて、ソフィアはそのすべてに参加する。彼女も専門は理系であり、現状の研究手ーマは理論物理学であり牧村に近いが、順平セミナーに立ち会うにつれ、自分が成長してきたのが自覚できた。


 日程の半分を過ぎるころは、彼女もセミナーの中でキー的な役割をするようになっていており、尚更セミナーの成果は高まっていった。そうして、彼女と日々接触するうちに、順平は目から入る女性の柔らかさ、さらに近く接することでにおいに性的な刺戟を感じざるを得なかった。ソフィアには、恋人がいて彼女とそういう関係になることはないが、なにかもやもやした感じになっていく。


 さて、1カ月の期限が近づき、帰るころには、アメリカ政府内部でかなり深刻な話し合いがあった。

「順平とはいうのは何なのだ。たった1カ月に満たない間、人々とディスカッションするのみで、おそらく我が国の種々の研究の3年分が成し遂げられてしまった。こうしてみると、日本の一大学があれだけの成果を上げるのはよくわかる。

 彼自身が、おそらく歴史に現れたことのないレベルの天才であり、さらに、超絶的な触媒としての能力を持つ。日本では、すでに彼がいなくてもそれなりの成果を上げているらしい。今までの成果からすると我が国でもどうなんだ」


 大統領が興奮して言う。彼は昨日順平が関与して生まれた、または生まれつつある技術の報告を受けた所なのだ。それにセミナーのセットなど世話役をしている補佐官が答える。

「例のソフィアが順調に育っていますね。彼女から、触媒の役割ができる人材を8人ほどピックアップしてもらっています。その人々は例外なく優れた成果を上げている人々です。しかし、彼らを機能させるためには、すこし順平自身からの集中的なレクチャーが欲しいということです。そう、あと半月ですね」


「うん、あと2週間滞在の延期を頼もう。阿山にも頼んでおく。本人には私から頼むよ。今、彼はワシントンだったよね」

 順平も、さすがに大統領から2週間の滞在延長を頼まれると嫌とはいえなかった。


 帰国後、随員として付き添った木山と安田のうち代表して木山が上司の酒匂に報告する。

「滞在中は報告書でお送りした通りで、アメリカ側も成果に大変満足したようです。それと、これは報告書には書いていないのですが、順平君、ソファイアというか女性にずいぶん関心を持ち始めたようですね。彼も13歳ですから、もう性欲をもつ年頃ですよ」


「おお、やはり鹿島(女性班長)のいう通りだね。わかった、1.5カ月ご苦労だった。少し休暇は伸ばして10日間与えるからゆっくり休んでくれ」

 報告に対して酒匂が答え、おもわぬご褒美に木山たちが嬉しそうに返す。

「は、ありがとうございます」


 酒匂は、木山、安田が去ったあと、ある番号に電話をかける。

「酒匂です。順平君も春の訪れのようです。カウンターパートのソファイアという18歳の女性、彼女もMITの博士課程ですから天才ですけど、その彼女に大分刺激を受けたようです」


 酒匂の通話に女性の声が答える。

「でも、そのソフィアにお熱を上げなくてよかったわね。そう、少し遅めね。ちょうど、新学期だから都合がいいわ。準備は出来ているから早速手続きをします」


 

 久しぶりに研究室にいる順平に、やってきた牧村が言う。

「順平君、今度研究室に3人院生が入ってくる。かれらは、東京のK大学で新しくできた飛び級制度ですでに学部を終えた学生だ。少し学期には早いけど。明日、顔を出すはずだよ」


「飛び級というと若いのですか」

 顔を挙げて問う順平に牧村が答える。

「うん、2人は18歳で、一人は16歳だ。みな女性だよ」


「ええ、女の娘!」

 驚いて順平が言うのに牧村が冷やかし気味に言う。

「いいじゃないか。華やかで。楽しいとおもうよ」

 その言葉に順平は照れて言うが、嬉しそうだ。

「ちょっと苦手だな」


 翌日、牧村が3人を案内して順平の部屋に来た。

「順平君、まずこちらが朝比奈さよりさんだ。衛生工学を専攻していた」


「朝比奈さよりです。18歳、身長153cm体重50kg、バスト82cmだけどまだ成長途中よ。順平さんに教えてもらうのを楽しみにしています」

 入ってきた女性の1人は、順平に向かってウインクするが、眼の光が強く、短髪で活発そうな感じの明るい娘だ。


「次に、西田すみれさんで、物理学専攻だ」

 続いての牧村の紹介にぺこりと頭を下げて言うのは、少しおとなしめで、体重はたぶん50kg位、バストは70cm台か。肩までかかるやわらかそうな髪だ。

「西田すみれです。やはり18歳で、物理学を習ってきています。あ、身長は155cmです」

 

「最後に、篠山はるかさん。生理学の専攻だな」

 牧村が紹介すると、やはりおとなしめに頭を下げて自己紹介するのは、身長は150cm、体重45kg程度はやり長髪で、やわらかい目線の優しそうな娘だ。

「篠山はるかです。生理学を専攻していて、江南大学はがん治療のメッカなので大変楽しみにしてきました」


「ええ、と。彼女たちは、基本的にはそれぞれの専門の教室で学んでもらうが、部屋は同じ階で用意しているので、基本はそこから通ってもらう。3人とも、順平君の開発誘発セミナーにはできるだけ参加してもらいたい。いいですか」

 一応紹介が済んだところで、牧村が皆に向かって言うと、3人娘は素直に答える。

「「「はい!」」」


「ちなみに、女子寮の部屋にはもう入っているよね」

 牧村の問いに朝比奈さよりが答える。

「はい、昨日入りました。個室だし立派な部屋で驚きました」



 その日帰宅後、牧村が妻の早苗と話合っている。

「順平君に付けるようにということで、3人、どの子も天才級の子たちを送り込んできたけど、だいぶ政府のたくらみが入っていそうだね」

「美人なの?」

「うん、それぞれに個性的で美人だね。特に16歳の篠山さんはめったにいないレベルの美人だな」


「私が政府側だったら、順平君には早めに女性をあてがって、結婚などさせずできるだけたくさんの子供を作らせるわね」

 早苗はいたずらっぽく言ってさらに続ける。


「たしかに、順平並みの天才はなかなか生まれない、というか実際に生まれたのは恐らく史上初でしょう。その彼と、優秀な女性との子供だったら、天才とはいかなくても超優秀な子が生まれる可能性は高いものね。

 開発誘発セミナーが広まってきているおかげで、衆知をうまくコーディネイトすれば、いわゆる天才がいなくても大きな成果が期待できることが解ってきたわよね。その意味で、知識を系統的に早く身に着けられる優秀な人の需要が高まっているから、政府の期待は大きいと思うわ」

「しかし、女性側はいやだろう。結婚せずに子供だけというのは」


「そうじゃないわ。特に、天才級の優秀な女性は、恋にあこがれるなどということはないと思うわ。それより、歴史に間違いなく残る超天才の順平君の子供だったらほしいと思っているはずよ。優秀な子供というのは本人が優秀であればあるほど、ほしいはず。また、幸せな家庭を築きたいのだったら、その子供をもってからほかの男性と結婚すればいいのだから。

 そのあたりは、彼女たちはすでに言い含められているはずだし、たぶん国から経済的な援助も約束されているはずよ。第一、順平君は、使いきれない収入があって、たとえ子供が10人できても、20人できても全く困らないのよ。今度来た3人は、ライバル同士とお互い意識していると思うわよ」


「そうかな。国もそこまで考えるだろうか。また、考えていても10代の女性が受け入れるだろうか?」

「絶対よ!13歳の順平君も魅力的な女性のアタックにはかなわないと思うな。ちょっとお母さんの洋子さんには、ショックを受けないようにレクチャーしておかなくては」


「ええ!そこまで?」

「賭けましょう。私が勝ったら、パリに連れて行って」

「よし、受けよう!僕が勝ったら、ニュージーランドだな。前から行きたかったんだ」

 2か月後には、牧村は早苗に負けを認め、夏にパリに行くことになった。娘の舞は大喜びであった。


 セミナーの部屋に行く順平に、3人の魅力的な女性が絡まりながら一緒に歩く。廊下ですれ違う人々は目を丸くして振り返る。順平は、触れる手、やわらかい肩、においを意識せざるを得ない。

 しかし、彼女たちは一見軽い見かけによらず極めて優秀であり、セミナーに参加すると優秀なメンバーであり数々の独自性の強いアイディアを連発するようになった。


 ある時、たまたまほかの2人が外に出ていて、順平と朝比奈さよりが2人きりになったとき、さよりがそっと順平に言う。

「ねえ、順平さん。明日は土曜日ね。デートしない?」

 順平はあたふたして、顔を赤くして答える。

「デ!デート!う、うん!もちろんいいよ。どこがいいかな?」


「わたし、呉に行って、“おおぞら”を見てみたいな」

「うん。いまは“おおぞら”は改修中で、呉にいるよ。飛べないけど中には入れるよ。それでいいかな」

「ええ、うれしいわ。でも西田さんと篠山さんには秘密よ!」

「うん。わかった」

 順平にとって、その日はセミナーは集中するのに少し時間を要した。


 翌土曜日、順平は警備責任者の酒匂に頼んで呉まで車を出してもらう。すでに、森下艦長には視察の許可はもらっている。

 今日の同行者は休暇から帰った、木山、安田コンビである。大学の正門前で待っていた、朝比奈さよりが車から降りた順平に寄ってくる。


「ちょっと残念だけど、2人だけでは行けないけどさあ乗ってください」

 順平に割り当てられている車の後部座席に並んで座る。運転手はガードも務める安田であるが、彼は順平が女性を連れてくるだろうことは言われている。シートに落ち着いてから順平はさよりに聞く。

「西田さんと篠山さんには何と言って?」

「デートよ!ってね。冗談だと思っているわ」


「呉は始めて?」

「いいえ、おじいさんが海上自衛隊だったの。だから何度か呉のおじいさんの家には行ったわ。戦艦大和の縮小モデルとか、陸に上げている潜水艦に入ったりしたわ。なにより、港にいる沢山の自衛艦が印象的だったわ。ねえ、順平さんは今まで女の子と付き合ったことは?」


「ないよ。周りには大人の女性ばかりで、僕もあまり関心がなかったから」

「いまは、関心があるの?」

「うん、あるよ。朝比奈さんとこうしているとそわそわ落ち着かないんだ。でもうれしいな」


「さより、と呼んで」

「うん、さよりといるとうれしい。僕のことも順平と呼んで」

 さよりは、順平の手を取って、体を寄せる。順平は体を硬直させるが、おずおずと肩に触れる。さよりはさらに体を寄せる。

 呉までの2時間、順平は夢心地であった。


 “おおぞら”は、すでにレールガン、バリヤーなどの取り付けは終わっているが、最後のコントロール装置の調整に入っている。おおぞら型飛翔自衛艦は、現在3隻が同時に建造中であり、年末には完成の見込みである。”おおぞら”には無論レールガンを搭載する。


 艦載型のレールガンの従来の欠点は、地球が丸いことから長距離の海上または地上の的を射撃できないことと普通は思う。だが、実際は脱出速度を越えない限り結局重力に引かれて落ちてくるので、その軌道をきちんと計算すれば正確な射撃はな能である。


 実際、的の位置を正確につかめば、距離200km程度の正確な射撃は可能である。また、一方で大容量の電源装置が必要なことから、戦闘機はおろか輸送機でも載せられない。その点で“おおぞら”は理想的なレールガンのプラットホームであり、重量10kgの弾を10秒間隔で撃てる大容量ガンが2基設置されて上下左右、船体の全周をカバーしている。


 なお、航空機やミサイル対策に口径が小さく、初速も落としたガンが4基積まれており。これは毎秒1発撃てる。また、ミサイルや砲弾でも防げる(大容量レールガンは無理)バリヤーも設置しているので、たぶん無敵に近い能力をもっている。


 森下艦長が『このやろー、色気づきやがって』と内心思いながら迎える。

「おお、順平君、デートか」

「い、いや、朝比奈さんが“おおぞら”を見たいというので」

「まあ、入ってください。中は、順平君が見た時と変わっていないけどね」


 1時間ほど“おおぞら”の中を見て、外にでたが、ちょうど昼時である。

 海辺のしゃれたレストランで順平とさよりは昼食をとる。

「どう、“おおぞら”は?」

「世界最初の宇宙にも行けるバトルシップでしょう。すごいわ。でも普通の潜水艦もみたいに狭苦しくはなかったわね」


「うん、そのあたりは工夫したよ、場合によって1年以上の長時間航行が必要になるからね。超光速飛行の見込みもついたので、おおぞら型の2号艦以降が完成したら宇宙探検だ。来年からだね。ところで今日は何時ごろまで帰ればいいの」


「そうね、5時ごろまでかな。ねえ、もう少し順平とお知り合いになりたいな。どこかないかしら」


「うーん、セキュリティがあるから、ちょっと不特定多数が来るところは無理なんだよね。ホテルのスイートとかになってしまうな。父とか母とかでよそに行ってくつろぐときはそうなるんだよ」

「でも料金がとんでもないでしょう?でも順平は問題ないか」

「そうなんだよね。使い道のない金がね。どう、あそこに見える、リゾートホテル」

「うん、行こう」


 海辺の丘に建つリゾートホテルに行き、運転手を務める安田が、スイートを取る。寝室の他に、20畳を超えるリビングがあり、ベランダもある。

 さよりはベランダに出て、「わあ、きれい。でもちょっと寒いな」と引き戸を締める。

 

 2人は巨大なソファに隣り合って座る。順平は少し大胆になって、さよりの細い手を取る。さよりが体を寄せる。順平は、さよりの体を引き寄せる。彼らは、2時間後ホテルを出て、帰途につく。帰りの車中、順平とさよりはずっと寄り添っていた。


 さよりが寮に帰って部屋に入ると、すぐノックの音がして、ドアを開けると西田すみれと篠山はるかが立っている。

「まあ、どうぞ」

 さよりは2人を部屋に招き、「まずは、お茶をいれるわ」と小さな応接セットに座らせ、ポットの電源を入れる。

「本当にデートだったの?順平君と?携帯をシカトして」

 座ったすみれが口を尖らせて言う。


「うん。楽しかったわ。呉に行って、自衛隊の飛翔型護衛艦“おおぞら”を見て、食事をして、楽しくお話をしたわ」

 さよりが、しれっと答えるのにすみれが言う。自分も同じことをするとして考えたのだろう。

「だけど、場所が困るでしょう。人が来ないところというと」

「うん、だからホテルのスイート」さよりがこたえる。


「「ええ!ホテル!」」2人が驚く。

「ベッドだけしかないところとは違うわよ。でも結構いいところまで行ったわ」

「ええ!もう!」


「最後までは、いってないわ。彼もまったく女の子に触るのも初めてのようだから。まあ、わたしも経験があるわけではないんだけど。でも、時間の問題ね」

「ど、どうするんですか。結婚もしていないのに許すんですか」

 若い篠山はるかが鼻を膨らませていう。


「彼は、おそらく人類の歴史始まって以来の天才よ。もうそれは知る人は知っていて、日本にとっては最大の宝で、よその国にとってはよだれが出そうなほど魅力的なターゲットだわ。だから、彼の相手の結婚は大変よ。いつもセキュリティがついて。

 私は、彼の子供が欲しいのよ。歴史上最高の天才との子を産むなんて。まあ、本人も結構キュートで一緒にいると胸がきゅとはなるけどね。子供ができたら、まあ気楽に付き合う仲で、その気になったらセックスもするという感じかな。

 また、いい人がいたら、子連れで相手が納得すれば結婚してもいいな。だから、あなたたちがアプローチするのは全く邪魔をする気はないし、あなたたちが子供を作ろう、または結婚したいというのなら応援するわ。あなたたちも、あの早良さんから話は聞いたでしょう」

 

 さよりはそう言って、皆に沸いたお茶を注ぐ。

「ええ……。近づいて、まあ仲良くなってほしいという話ね。子供は育てるの際しては、国が全面的に面倒を見ると。また、育てる間は秘密で多額の資金を出すということ。年間500万円は保証すると言っていたわ」


 すみれがためらいがちに言うのに、さよりがなおも言う。

「そう、国は彼が結婚して、彼の結局子供が2人とか3人どまりになることは避けたいわけ。多い方がいいのよ。同じレベルの天才が、たとえ一人でも生まれてもすごいことよ。まあ、私たちも畑はいい方だから、歩の悪い賭けではないわね」

 2人は毒気に充てられた様子で帰って行った。


 さよりが妊娠して、ひそかに女の子を出産したのは翌年1月であった。その後西田すみれは男の子を4月に出産した。



宇宙に飛び出すまで5話かな。

2025年、12/11文章修正。

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[一言] >「彼は、おそらく人類の歴史始まって以来の天才よ。もうそれは知る人は知っていて、日本にとっては最大の宝で、よその国にとってはよだれが出そうなほど魅力的なターゲットだわ。だから、彼の相手の結婚…
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