争乱 6
「フィリア様こちらに」
「あなた・・・ガランのところの」
「はい、ロイでございます」
「そのロイが何?」
「はい、フィリア様の護衛にとガラン殿下がご命令されましたので」
「そう、いいって言ったのに・・・ガランったら」
フュン! ガン!
「な、何?!」
突然の激しい金属音がフィリアの耳に響いた。
「フィリア様、後ろへ」
ロイの言葉を聞きようやく今の状況を把握できたフィリアは、その光景に驚きを隠せなかった。
「な、なんで我がプラハロンドの魔導人形が襲ってくるの!?」
見覚えのあるメイド服に戦闘用の防具を身に着けた魔導人形が、細身の刀をフィリアに向けて振り下ろしていた。
しかし、それをロイが左腕で完璧に受けきっていた。
「ロイ! 大丈夫!?」
「はい、問題ありません。この程度の斬撃でしたら私の体は斬れません」
「そう・・なの?」
プラハロンドの魔導人形は、ロイの左腕を蹴り飛ばし、大きく後方へと飛び退くと音もなく四つん這いで床に張り付いた。
「フィリア様、防御態勢を」
「分かってる! ロイも相手はシングル、それもあの戦闘系メイドの服・・・あれはお父様直属の親衛隊のもの・・・・お父様もこのロドエル兄様の無謀な計画に・・とにかくあの魔導人形はシングルでも桁違いに強いわ!!」
「そうですか?」
フィリアはロイの返答に違和感を覚えた。
どう言う事? ロイはガラン、帝国の魔導人形でも確かに強い方だけど、皇帝直属の魔導人形ほどではないはず。
この目の前の魔導人形は皇帝直属の魔導人形と同等だったと思ったけど・・・
「な、何をする!!」
「どう、どうしたのだ!?」
「きゃあああ!」
「ま、待て! 何故命令を聞かない!?」
突然会場中から悲鳴があがる。
「な、何?!」
フィリアは周囲を見回す。
「な、何よこれ? 魔導人形がどうして人を襲っているの!?」
「フィリア様、私から離れないで下さい」
ロイがフィリアの直ぐ前に立ち、襲ってきた魔導人形に視線を固定する。
「来ます」
ロイが静かに、でもはっきりと相対する魔導人形が動き出すと伝えてきた。
「何が起こっているのかわからないけど・・ロイの雰囲気が変わったような・・・」
その時だった。
ロイと相対して止まっていた魔導人形、そして周囲で主人たちを拘束し始めていた魔導人形の全てが一瞬固まった様に見えた。
「はっ、あ、あん!」
「ど、どうしたの?! ロイ!」
フィリアはロイの異変に気付いた。
顔が赤くなり、立っているのがやっとの様な状態で大きく肩を震わせながら息をしていた。
「ふふ、うふふふ」
顔を伏せ気味のロイが不気味な笑いを洩らし始めた。
「ロ、ロイ?」
「うふふふ、お姉様・・・この感覚はお姉様ですね。さすがです」
「お姉様?」
「な、何だ?」
「どうした?!」
周囲からも声が上がり始めた。
フィリアは周りを見渡すと、先程まで主人を拘束していた魔導人形が全て動きを止め、床に倒れていた。
しかも痙攣をおこし異常な状態の魔導人形もかなりの個体がいた。
「これは一体・・どうしたって言うの? 魔導人形が全て動きを封じられた?」
その光景は、ここに居る全ての人間が思っていた。
そしてそれは、ロドエルも同じだった。
「どうしたと言うのだ・・・・・これは・・・・これは一体どうしたと言うのだ!!」
叫ぶロドエル。
そしてその横に控えるブルタブル宰相にとっても予想外の展開だった。
「これでは、あの方の計画が・・・・仕方ないここは一度引くとしよう。殿下」
「な、なんだ、ブルタブルか。これは一体どういう事だ! 結界が消滅したのか?!」
「いえ、結界は稼働しております。ただ何らかの結界を上回る力が会場中に働いたのかもしれません」
「それは何だ?!」
「今の時点では判りかねます。ただ現状はこちらにとって最悪です。ここは一旦王都を離れましょう」
「はあ? 何を言っている! 私はこのプラハロンド王国の太子だぞ!」
「それは関係ありません。諸外国の要人を人質にと言いきった殿下に対してこのままここに居ては報復攻撃を受ける可能性があります」
「そんなもの、王都にいる他の魔導人形を全て投入すれば良かろう!!」
「それは不可能です。国王印がある魔導人形の権限移譲はまだ全て完了していません。ここでこちらが権限を持つ魔導人形を動かせば、それ以外の王都警備魔導人形と衝突を起こし、王都に争乱が起こる可能性があります」
「そんな事、力で抑えればよかろう!!」
「数的に不利です。それにここに居る各国の魔導人形もどう動くか分かりません」
「くそ!! ではどうする?!」
「連合の隣国にこちらの戦力と共に移動し、そこからもう一度体制を立て直します」
「・・・・・・・・・・くそ!!」
「お早く決断を」
「・・・・・・・・分かった。一度引くぞ!」
「はい・・・・・・」
やはりこの程度か・・・・
会場中が騒めいている中、ロドエル殿下を中心にした一団が静かに消えていった。
その事に気付いていたのは、ノールだけだった。
ありがとう! ありがとう! ありがとうございます!!




