【73】1月7日+光星
朝6時、起床。
平日も休みの日も、だいたいこの時間に起きる。
「おはよ、母さん」
「おはよ、光星。ごめん、あと宜しく」
そう言って、慌しく家を後にする。キッチンに目をやるとシンクには、食器がそのままになっている。
まぁ、いつも今までも、この家はこんな感じだ。
父さんは、もっと先に出たんだろう。
愛用のマグカップには、飲み掛けのコーヒー。
後片付けをしながら、自分たちの朝食の準備に掛かる。
本当は、今日の朝ご飯の担当は姉さん。
小さなあくびをしながら、半纏を着て階段を下りてくる姉さん。
「おはよ、姉さん」
「おはよ……。ごめん、今日は私なのに…」
そして、もう一度小さなあくび。
「明日は、やってくれよ」
「…うん」
今朝の姉は、やけに素直だ。
しかも、ぼーっとしてる、心ココにあらず状態だ。
結局、昨日、あれからマコトの家に行って、大河さんと一緒に料理をしてお雑煮食べて、マサミチさんとマサトモさんも後から帰ってきて――。
「夜、遅くまで起きてた?」
「…う~ん」
ご飯を食べながら、話をする。
まだ眠いのか、目をしょぼしょぼさせて大根の味噌汁を啜る。
起きてるのか寝ているのか、その境を行ったり来たりしてる。
「光星は、何か鍛えたりしてる?」
いきなり半分寝ている頭で、何を言うかと思えば。
「そんなの姉さんが、一番よく知ってるくせに」
「……そう、そうだよね~」
親よりも、友達よりも、一番近くに一緒に居るのだから。
だから、姉さんの考えてる事なんて外す方が難しい。
「マコトの腹筋が、気になって眠れなかったとか?」
「んぐっ?!!!!!!」
俺の作った味噌汁を必死になって、飲み込もうと涙目になって胸を叩いてる。
「ちがっ!!!だって、気になるとか、そんなのっ――」
さっきまで、夢うつつだったくせに、完全に今ので覚醒。
耳まで真っ赤になって、しどろもどろになってる。
根が真面目でちょっと融通が効かない性格は、俺には無いところ。
一直線もいいけど、もう少し適当とか、いい加減とかでもいいんじゃない?
(まっ、そこは俺が居るから、フォローするとして…)
「今まで、特に何にもしてないから、俺も何かして鍛えようかな~?」
「っ?!!!!!!!!!!」
姉さんの右手に力が入り、箸が今にも折れそうに、みしっと悲鳴を上げている。
「そうよ!何となくモヤっとしていたというか、悔しいというか、羨ましいというかっ!!」
バンっと、両手をテーブルについて、高らかに宣言した。
「私、マコトにだけは、絶対負けたくないのっ!!だから、鍛えるっ!!!!」
(………)
やっぱり、姉さんはこうでなくっちゃ。
いや、少しは変わって欲しいかも……。
そんな事を考えながら、今年も一年こんな感じでもいいかなと、思った――。




