【64】10月23日+光星
3人で付き合うって、こういう事。
今までなら、俺と姉さんは放課後まで一緒に過ごしたりしない。
いつも“彼女”という者が現れるから。
女の子は嫌いじゃない。
むしろ、大好き。
だけど、俺にとって一番大事なのは家族。
付き合えば優先順位が1位になると思うのか、後回しにされると“彼女”という者は許せないらしい。
しばらくは、フリーというのもいいかもしれない。
「光星!さんま!安いっ!!」
スーパーに着くや否や、真っ先に鮮魚コーナーに向かう姉さん。
「6匹?」
嬉しそうに楽しそうに、姉さんは氷水の中から、さんまをビニール袋に詰めていく。
「8匹、入れといて」
「え?…誰が、2匹食べるの?」
「今日は、大人数だから」
「???」
何、それ?とか、教えてくれてもいいんじゃない!とか。
そんな言葉を呟きながら、きちんと俺の言った分のさんまを入れて、買い物カゴへ。
「光星、あとは?」
「まぁ、欲しい物があれば、適当に」
「千星先輩~~!光星先輩~~!」
両腕にいっぱいお菓子を抱えて、マコトが駆けて来る。
そんなマコトを見た姉さんが「そんなにお菓子、買ってどうするのっ?!」と呆れている。
「どうするって、千星先輩の好きそうなの選んできたんですけど」
そう言って、マコトは買い物カゴに、ささっと入れてくる。
確かに秋期限定や季節限定ものばかり、よく集めたものだ。
「――た、食べてもいいのね?」
姉さんの声色が変わる。
新作や限定ものが大好きで、試したくなる気持ちは分かるけど、ここまで執着しなくてもと日々思う。
「勿論、千星先輩!何事も挑戦してみないと、です!」
二人して、にっこり笑っている。
たぶん、姉さんはマコトの事、仔犬ぐらいにしか思ってないんだろうな。
(仔犬って思ってる内は、平穏って事か…)
3人で付き合うっていうのも、期間限定なんだろうな。




