【63】10月23日+千星
3人で付き合うって、どういう事?
中間試験の最終日の今日。
HRが終わると私のクラスに光星が来る。
以前なら私の事なんて放っておいて、“彼女”と帰ったりするのに…。
だから、私はいつも、つかさと一緒に帰ったり、五十鈴と遊びに行ったりする。
なのに、この頃のつかさは、生徒会役員でもないくせに、お手伝いという理由で生徒会室に入り浸っている。
そして、五十鈴は白澤と最近やけにべったりだ。
勿論、黙って見てる訳じゃない!だけど、何かと邪魔されていると言うか、うまく五十鈴の傍に行けないって言うか…。
光星が、マコトが――2人して仕組んでいる?
それとも、周りの全てが私の行動を制御してる?
「姉さん、買い物して帰るから」
「…分かった」
「今日は、さんまが食べたいってさ」
「………」
誰のリクエストなんて今さら聞くまでもない。
すっかり、私たち双子の姉弟は、姫野家で晩ご飯を食べるようになってしまっていて、学校が終われば自分の家に寄る事無く、そのまま姫野家に行く。
「私は、大根おろし係り?」
「それは、大河さんにしてもらう」
今夜の食事は、光星が当番。
2人だけで交代でしてたあの頃とは違い、大河さんや、時にはマサトモさんマサミチさんも晩ご飯を作ってくれるので、楽になったと言えばそうなんだけど……。
「マサトモさん、今日はバイト無いって言ってたから、後でテストの見直し一緒にしてもらったら?」
「そうする!」
マサトモさんも、マサミチさんも、少しも嫌がらず、むしろ進んで勉強を教えてくれるので私としては大助かり!
今さらだけど、こんな風に誰かに頼って何かをするなんて無かったから。
一人で、時には光星と二人で、頑張ってきたから。
「千星先輩~~!光星先輩~~!」
突然、廊下の端から大きな声で自分の名を呼ばれ、ギョっとしてしまった。
相変わらず、マコトは本当に嬉しそうな顔をして駆けて来る。
もうこの光星にも慣れてきたんだろう、周りの生徒たちは特に気にする人も居ない。
でも…――。
あの駆けて来る姿は、いつ見ても、まさに仔犬。
わんこ、だ。
思わず、撫で撫でしたくなる。
(いつもと変わらないと思うんだけど…)
3人で付き合うって、こんな感じでいいの?




