表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
60/84

【60】10月13日+④

「食ってけ~!」



――て、大河さんが言うから…。


なのに、光星がお米を研いで、私が玉ねぎをみじん切り。


今夜は、ハンバーグ。



「こ~せぇ~!」

「姉さん…、俺に言っても、無理」

「玉ねぎが、私を~~!!」

「だから、俺にもどうも出来ないって」



私が必死になって、玉ねぎを切っていると「ただいま」と玄関先で声がして、そのまま足音は台所に向かってくる。



「ただいま。千星ちゃん、光星」

「お帰りなさい、マサミチさん」



帰ってきたのは、この家の長男、真理(マサミチ)さん。


返事をしたのは、お米と研ぐ私の弟の光星。



「何か、いいね。新婚さんみたい。千星ちゃんも“お帰りなさい、あなた”って言って欲しいな」



(ひーーっ!!い、誰が、言うかーーっ!!)


“新婚”って何だ?


しかも“あなた”って何だーー!!


第一、私は、今、それ所じゃない!!


この生意気な玉ねぎが、私の目を集中攻撃して、許せないのよ!!



「千星ちゃん」

「え?」



マサミチさんの手が私の頬に、慌てて手を止めてマサミチさんを見上げる。


スっと、優しくハンカチで涙を拭いてくれるマサミチさん。



「千星ちゃんの可愛い泣き顔が見れて、早く仕事を切り上げて正解だったね」

「ひーーーっ!!!!!!」



か、可愛い泣き顔だとーーー!!!


私は、泣きたくて泣いてるんじゃない!


目が!玉ねぎで、目が!!染みて痛いっていうのーーー!!!



「マサミチさん、そこまで!――じゃないと、姉さん、凶器持ってるから」

「あぁ、そうだね。千星ちゃん、みじん切り頑張って。次は唇で拭ってあげるよ」

「いっ、要らんわーーーっ!!!!」



泣きながら怒っても、迫力激減。


う~~っ、思い切って、グサっと一思いに刺してしまえば良かった。



「姉さん、殺人はダメ」



光星が私の心を読んだのか、どこか暢気な声でそんな事を言う。


そして、炊飯器のスイッチを押し、私から包丁を取り上げる。



「続きは、俺がするから、顔でも洗ってきたら?」

「うん、そうする…」











洗面所で、顔をと言うより目をしっかり洗う。


洗い終わって目の痛みが無くなったのは、良いんだけど…。



(あ、タオル…)



「千星チャン、はい、タオル」

「ありがとう――マサトモさん」



声で分かる。この家の次男、真智(マサトモ)さんだ。



「まだ、前髪が濡れてるよ」



と言われ、鏡を見ながら前髪も拭く。



「髪の毛、梳いて上げるから、そのままで居なよ」



てっきり、ブラシで梳いてくれるんだと思ってたのに。



(て、手ぐしかいーーーっ!!!)



でも、頭を撫でてもらうの、すっごく気持ち良い。



「千星チャン、気持ち良い?可愛いな、そんな顔されたら、我慢出来ない」

「ひゃあーーーっ!!!!!」



可愛いな、だと?!


我慢出来ない、だと?!


どこを触って…、み、耳を触るな!!!


このっ――変態がーーーーっ!!!!!!



「マサトモさん、そこまで!――じゃないと、姉さんが凶器を作ってる」

「あ、ちょ、ちょっと待った!千星チャン!!イタっ!痛いっ!!悪かったって!!!」

「これでも、喰らえーーーーっ!!!!」



濡らしたタオルをぎゅーっと絞り、振り回して変態を撃退する。


傍から見れば、コントにようで情けないけど…。


う~~っ、このタオルで息の根を止めても良かったかも。



「姉さん、殺人はダメ!2回目だよ」



光星がまた私の心を読んだのか、抑揚の無い暢気な声でそんな事を言う。


そして、取り上げられたタオルは、洗濯機の中へ。証拠隠滅。



「姉さん、みんな帰って来たし、食べる準備しようか?」

「うん、分かった…」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ