【58】10月13日+②
突然「ぷっ」と、光星が吹き出して笑う。
「はっ?!な、何がおかしいの?」
「だって、姉さんもマコトも同じ顔して、凄く間抜け~!」
「言っておくけど(三浦さんがどんな女の子か知らないけど)早過ぎない?別れるの!!」
「だって、俺、マコトに告白されて、姉さんと3人で付き合う事にしたから」
「~~~っ!!何を言って――!!!」
「だから、姉さん!その顔はダメだって~!!」
笑いが止まらない光星にムっとしながらも、無視してマコトに視線を移す。
「マ、マコトが、あの時、変な事言うから!光星が――!!!」
途中まで言いかけて、言葉を失う。
マコトは大きな瞳を潤ませ、頬を朱に染めて、嬉しそうに照れている。
(お、おまえは、乙女か――っ!!無茶苦茶、可愛いじゃない!!!)
男の癖に、その笑顔は可愛過ぎて有り得ないっ!!
「こ、光星先輩!あの、その、いいんですか?」
「別に。いつものように俺が振られたんだから。――という訳で、改めて今日から宜しく!」
何が“いいんですか?”よ!!
何か“宜しく!”よ!!
いっそ、あんた達二人が付き合えばいいんじゃないの!!
「でも、光星先輩が振られたりするんですね…」
「さぁ?付き合ってくれって言うから仕方なく。別れてくれって言うから、ハイ、そうですかって感じかな?」
(……それって、何だか、酷くない?)
我が弟ながら、それは女の子の立場から考えると、明らかに酷い男だ!
「光星、あんた、いつか後ろから刺されても知らないよ」
「う~ん、まぁ、そうなったら、後は姉さんに任せるよ」
“任せるよ”って、そりゃ、あんたがどんな極悪非道な男であったとしても、たった一人の双子の弟だ。
例え、相手が(敵が)どんなヤツであろうと、逃げはしない。負けたりしない。
戦って、勝って、守ってみせる。
「千星先輩に想われている光星先輩が、羨ましいです」
と、マコトが呟く。それを聞いた光星が――。
「まぁ、美しき姉弟愛って事で」
と、答える。
私が一人勝手にメラメラと無駄に闘志を燃やしていた時に、光星とマコトがこんな会話をしていたなんて……。
私の耳には届かなかった。




