【55】9月23日+⑧
体育館の鍵を掛け、マコトは職員室へ鍵を返しに行く。
私と光星は、正門前でマコトを待つ。
「買い物は俺が行くから、姉さんはマコトと帰れば?」
「え?…でも」
「その代わり、自転車は俺が乗って行くから」
「ちょ、ちょっと!!」
光星はハンドルを握って、私に自転車を渡す気は全く無い様子。
そこへ、マコトが「スイマセ~ン、お待たせしました!!」と戻ってくる。
「あれ?光星先輩、自転車なんですか?」
「まぁね、俺はこれから買い物だから、姉さんを頼む」
「は、はい」
「それから、マコト、携帯見た?」
「?――いいえ、朝、先輩に電話した後、すぐに充電切れちゃったから、家に置いたまま充電中です」
マコトと光星の会話を黙って聞いている。
光星が“姉さんを頼む”って、一人で帰れますぅ!!
迷子なんてなる訳ないし、バカにするな!!
それと“携帯見た?”って、何の話?
光星がひそひそと、マコトに耳打ちしてる。
メールがどうとか、添付がどうとか…。
何故か、マコトの耳までもが赤くなっていく。プシュっと湯気が見えそうなほど。
………あっ!
あああああぁーーーーっ!!!
あの写真っ!!!!
「千星先輩の…、可愛い、写真…」
放心状態のマコトがぼそっと呟いて、何かに憑かれたようにいきなり走り出す。
「じゃあ、姉さん!俺、買い物に行ってくるから」
そう言って光星は、ペダルを踏み去って行く。
「え?え?え?」
ど、ど、どうすればいいの!!
私を放置でそれぞれの思う方へ向かう、マコトと光星。
ここは、マコトより先に姫野家へ行かなくては。
追い掛けなくちゃ!
追い付かなくちゃ!!
追い越さなくちゃ!!!
そして、消さなくては!!!!
消去ーーーーーっ!!!!
削除ーーーーーーーっ!!!!
あの画像は、誰にも見せてはなるものかーーーーっ!!!!
「待てーーーいっ!!マコトーーーっ!!!」
今まで17年間生きてきて、人間、本気になれば、まだまだこんなにも速く走れるんだって知ってしまった。




