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【52】9月23日+⑤




その日の午後。


いつまでも、モヤモヤしてても仕方が無い。


気晴らしにと、夕ご飯の買出しに出掛ける事にする。


「じゃあ、これ」と光星に買い物リストが書いてあるメモを渡され、眉間に皺が寄る。


こういう日に限って、牛乳や小麦粉、さらにサラダ油…、重量の有る物ばかり私に買わす気?



「自転車に、乗って行けば?」

「そういう問題じゃな…い…」



私の声が段々小さくなっていく。


怒ってる。こんなに怒ってる光星は、なかなか見る事なんて出来ない。


決して、私のせいじゃない!私が悪い訳じゃない!私を怒ってる訳でもない。


なのに、穏やかな表情とは裏腹に、醸し出す空気は刺々しくチクチクと痛い。



――そうなのだ。



光星の場合、一度怒らすと長期に渡ってチクチクと鈍い痛みを与え続ける嫌なヤツになる。


私のように、ドカンっと爆発させた方が後腐れないと思うんだけど…。













折角だから、ショッピングモールまで行く事にする。


通う高校の通学路を、自転車で急ぐ。


正門は少しだけ開いていて、大きなバッグを肩に掛けたスポーツウェアの男子生徒が数人出てくる所に出くわした。


(試合、終わった?)


自転車を停めて、そっと校内の様子を伺う。


次々と生徒達が出てくる。だから、きっと、あいつも出て来るだろう。


出て来たら、言ってやりたい事がある。


今日の事は、少し――本当に少しだけ楽しみにしていたけど、仕方ない。


私さえ「気にしてない」と言えば、終わる話。


だけど、光星はそうはいかない。


あれは、どういう訳か半端無く怒っている。


この姉である私でも、どうする事も出来ない。ああなってしまったら…。



なのに…。



この私が、こんなに待っているのに、どうして出て来ないのっ?



イライライラ。



待ってられるかーーっ!!!!!



向かう先は、体育館。


ズカズカと歩く。その姿は、まるで――“乗り込むぞ!”


明かりがまだ落ちてない体育館には、ボールが弾む音だけが大きく響いている。


開きっ放しの入り口の向こうに、ボールが弧を描く。


コマ送りの映像を観ているような……。


でも、それは一瞬。


ボールはリングを外れ、バウンドしながら私の足元に方へと転がってくる。



「……先…ぱ…い」

「まだ、帰らないの?」



転がるバスケットボールを手にして、取りに来ないマコトにスニーカーを脱いで私から手渡しに行く。



「千星先輩、今日は――」

「今日は、勝ったの?」



私は敢て、マコトの言葉を遮った。



「勝ちました」

「試合には、出た?」


「後半残り10分だけ」

「もしかして、フリースロー決まらなかった?」


「……はい」

「それで、一人残って練習?」


「まぁ、そんな所です」

「付き合ってあげようか、練習?」



私は、手の中にあったボールを、マコトに向かって一直線にパスを出した。



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