表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
45/84

【45】9月19日+①



休日の図書館。


今日は、朝から一人でゆっくり問題集を制覇中。


問題が解けた時の気分は、勝負に勝った感じとと同じでとても気分がいい。


さらに、難解な問題ほど、制圧した時の気分は何とも言えない。


そんな私を光星は「姉さんって、ホント、戦い好きだね」と言う。


勿論、争い事は嫌い。


だけど「私は、常に前向きに物事を取り組んでいるだけ!」って言うと弟は「ふ~ん」という気の抜けた返事。


人生は勝つか負けるか。


時には、引き分けも有ってもいい。


つまり、何事も初めから負けてもいいやっていう気持ちで臨むのが許せないだけ。












――そろそろ、お昼かな?


何気に携帯を鞄から取り出し、時間を確認。


すると、着信が53件、メールが45件届いている。



「ひっ?!」



思わず、小さな悲鳴を上げてしまった。



(み、見なかった事に…、しよ…)



あの日、実力テストが終わった日から、私の携帯電話には悪戯電話?迷惑メール?と思わせるほどの大量の着信とメールが送られる。


何でも、マコトが言うには「実力テストが終わるまで、千星先輩(光星先輩も含む)に電話もメールも禁止!」と姫野家では決まったとか…。


そして、解禁となった今では、こんな風に大河さんから、マサミチさんから、マサトモさんから引っ切り無しに、着信を知らせる点滅が止む事が無い。



(――全く、どれだけ、暇なのよ…)



大河さんは、今でも現役の大工さん。


マサミチさんは、不動産関係の仕事、営業マン。


マサトモさんは、大学生。専攻はインテリアデザイン。


家族揃って、建築関係の仕事をしてる――私が最近知り得た情報。


素早く帰り支度をして、ささっと図書館を後にする。


冷房の効いた館内から出た時、また鞄の中でブーブーっという音が漏れて聞こえてくる。


し、しつこいっ!!!いっそ、着信拒否してやるーーっ!!


でも、待て!


ひと言!ひと言!言ってからでも遅くはない。


鞄から乱暴に取り出すのは、しきりに着信を知らせる携帯電話。


すーーっと、息を吸い込み、目をカっと見開いた。



「ふざけんなーーっ!!イタ電も大概にしろーーーっ!!!!!」



うん、すっきりした。



『千…星…、先…ぱ…』



携帯から蚊の鳴くような声が聞こえてくる。小さな画面には“マコト”と表示されている。


恐る恐る携帯を耳にあて、釣られてこっちも極最小の音声でひそっと声を出す。



「マ…コト…、なの…?」



今にも泣き出しそうな声が、緊迫した声色に変わる。



「千星先輩、今、何処なんですか?」

「何処って、言われても…」



辺りを見渡す必要なんて無いのに、「えーっと」なんて言ってみる。



「オヤジと兄貴たちが、先輩を狙ってます」

「………」



い、意味が分からない。狙ってるって?私を?



「大丈夫です!この会話は盗聴されてません」

「………」



だから、意味が分からないって!盗聴って?誰が?



「先輩…今…、何処に?」

「――図書館」



な、何なの?このちょっとしたサスペンス風な展開は?



「今、駅前だから、10分で――いえ、5分で現場に行きます。それまでは…、トイレにでも居て隠れていて下さい」

「ちょっと、マコ…っ!!!」



一方的に通話を切られてしまった。


――ところで、現場って、何?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ