【40】9月1日+②
そんな私の言う事なんて気にもしないで、つかさは五十鈴と白澤を交互に視線を送り「お二人でお出かけになったのね」と、うふっと笑う。
つかさが言うから、改めて見比べてしまう。
「五十鈴…、白澤と何処へ、行った?」
お腹の底から低い声が出る。
「へ?馨さんのトコに行ったんだよ」
馨さん…、それって、確か白澤の…、単身赴任中の父!!
「それって、…海外…」
「だって、去年はお留守番だったんだから~!!」
「二人で……」
今、私の頭の中は高速回転で想像された映像が浮かんでは次へ、浮かんでは次へ、と流れていく。
この夏休み、私は夏期講習に通い必死に勉強を――しかも、昨日も誰かさんの課題の手伝いまでしてたって言うのに!!
私の目は、ギラリと光った。
「千、千星ちゃんっ?」と五十鈴の小さな悲鳴。
「白澤~~!!五十鈴と同じように日焼けなんかしてんじゃないわよ!!お前だけは、白くなれ~~~!!!!!」
「千星先輩って、時々、無理な事を平気で言うんだから」
その言葉は、いかにも困ったもんです、と言っている。
「誰よ!私は、白澤が五十鈴と夏休み中ずっと一緒だったと想うだけでムカツクのよ!!――……え?」
え?“先輩”って、私の事?
「おはようございます、先輩!」
「――マコト…」
目が合うと、ニコっと笑うマコトが私のすぐ後ろに立っていて、五十鈴たちと挨拶を交わしている。
「千星さんって、姫野くんの事“マコト”って呼ぶようになったのね。いつからなのかしら?」
と、つかさが訊いてくる。こういう所だけは、抜け目ない。
「夏休みの間にですよ、麻生先輩」
――って、何、普通に答えてるのよ!マコト!!
そして、次に五十鈴が私とマコトを見比べて何かに気付く。
「あれ~?千星ちゃんとマコトくんって、同じ背になってる~」
「そんな訳ないでしょう!!」
と、もう一度、ゆっくり振り返る。
目線が――合う。
マコトと目線が、合う。
確か、夏休み前は、私の方が少し見下ろしていたのに…。




