【37】8月31日+①
「さて、姉さん、帰ろうか」
「………」
まさか、2泊もするなんて予想外。
さすがに明日から2学期。家に帰らなくてはいけない。
光星が大河さんにお礼を言っている。
「ほら、姉さんも」と肘で突付かれ、ボーっとした顔で「お世話になりました」と心ココにあらず。
そんな私に、大河さんは私の両腕を力いっぱい掴んできた。
「ありがとう!!千星子!!今年は、千星子のおかげで――!!」
と言いかけて、大河さんはうるっと涙声。
「はぁ…」
私らしくない、生気の無い返事。
毎年、8月最後の日の姫野家は、夏休みの課題でとんでもない事になっていた?
も、もしかして、その為に、お泊りしたとか言うんじゃない――っ?!
結局、あの後、どうしたかと言うと。
マコトが、どうしても分からないという問題を千切っては投げ!千切って投げ!と教え解いていった。
確か「これで終わり!!」って、マコトが泣きながら叫んだまでは憶えている。
時間も午前4時を過ぎていて…。
次に目が覚めたら、午後2時。
雑魚寝状態で、お腹の上にはタオルケット、そして隣には――マコト。
「――っ!!!!!」
課題が終わったのと同時に、そのまま倒れるようにして寝てしまったんだ、二人して。
憔悴しきった顔をして寝息を立てているマコト。
口を開けて寝ていても、可愛い。
撫で撫でしたくなる柔らかそうな茶色の髪。
微かに震える長い睫毛。
「――ち、せ、せん、ぱ……」
「!」
……ね、寝言?!
「千星…、せんぱ…、くだ…さ…い」
「………」
「オレにも、に、に」
「…?」
「肉をーーっ!!」
「――っ!!!!!!」
こいつ、一体、どんな夢を見てるのよーー!!!!




