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【36】8月30日+真実
「ち、千~星~せ~ん~ぱ~い~」
しくしくと泣きながら、シャーペンの動きは亀の歩みより遅い。
「いつまでも泣くな!!男の癖に、めそめそと!!!」
「だって、足が痺れて~」
「だったら、早く終わらせなさいっ!!!」
椅子に座っていたのに、「そこへ座れ!」と言われたので畳の上に胡坐を掻いていたら――。
「マコト!!」
「は、はいっ!!!」
千星先輩の声で、思わず正座をしてしまったのが後の祭り。
ちゃぶ台を用意され、そこで課題をする羽目に。
目の前には腕を組み仁王立ちの想い人。
まさか、ここまでスパルタだとは……。
「お、お腹、空きました…」
そう言うと、先輩はキッとわずかに隙間のある襖に目を向け、「大河さん!!さっきのチャーハン、光星に持って来させて!!」と命令する。
ドカドカと、廊下を走り去って行く足音。
(オヤジ…、覗くぐらいなら、助けてくれ…)
しくしくしく…。
オレは、心の中で泣いた。




